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2014 年度 実施状況報告書

運動による筋の質・量の変化におけるマクロファージ中心仮説

研究課題

研究課題/領域番号 25350901
研究機関東京大学

研究代表者

池田 真一  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50534898)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードインターロイキン6 / 運動 / インスリン感受性 / GLUT4
研究実績の概要

運動による筋インスリン感受性亢進は運動後に筋に集積するM2マクロファージによって制御されている可能性を示してきたが、M2マクロファージがどのように骨格筋にはたらきかけ筋インスリン感受性を亢進しているかはあきらかではなく、また運動後にどのようにマクロファージが筋へ集積しているかも不明であった。研究代表者はMilliplex multi cytokin arrayを用いて、運動後の筋、および血中のサイトカイン・ケモカインの継時的変化を半網羅的に解析を行った。その結果、インターロイキン6、KC、MCP-1の著明な増加が認められた。運動前にこれらの中和抗体を投与することで、筋インスリン感受性亢進は抑制され、KC、MCP-1の中和抗体ではマクロファージの集積も抑制されたことからこの2種のケモカインが運動後の筋にマクロファージを誘引していることが考えられた。しかしながらIL-6の中和ではマクロファージの集積は抑制されなかった。インスリンシグナルや糖輸送担体の詳細に解析した結果、IL-6の中和により運動後に増加するGLUT4の発現が抑制されていることが示された。また、リコンビナントIL-6をC57BL6Jマウスに単回投与すると、50pg/mlから1000pg/mlの濃度では速筋・遅筋ともにGLUT4の発現が増加が認められた。さらに、骨格筋細胞株であるC2C12にIL-6で短時間(3~12時間)処理するとGLUT4の発現増加が認めれたが、長時間処理では逆に抑制された。このとき、STAT3の阻害剤を使用するとIL-6によるGLUT4発現増加が抑制された。以上の結果から、運動による筋インスリン感受性亢進は、筋収縮により筋から産生・分泌されたKC, MCP-1によりマクロファージが筋に集積し、IL-6-STAT3経路を活性化することでGLUT4発現を増加することで生じることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

運動による筋インスリン感受性のメカニズムに関して、どのように筋へマクロファージが集積するのか、とその後どのように筋インスリン感受性亢進が生じるのか、の両方についてその分子機序の一端を示すことができたことは大きな進展であると思われる。

今後の研究の推進方策

MCP-1は多くの場合、炎症細胞のリクルートに関わるケモカインであるが、本研究においては抗炎症性マクロファージであるM2マクロファージの集積に関与しているような結果が得られた。これは、MCP-1により誘引されたマクロファージは誘引された場の環境、すなわち微小環境に応じてそのプロファイルを炎症/抗炎症と切り替えているのでないかと考えた。一過的走運動により筋インスリン感受性が亢進する際、マトリックスメタロプロテアーゼの活性化が認められた。このことは、運動後の筋組織内で細胞外マトリックスの利モデリングが起こる可能性を示している。マクロファージと筋細胞は基底膜を介して接しているため、基底膜の構成成分の変化による微小環境の変化がマクロファージのM2への成熟、もしくは筋インスリン感受性の調整を行っているのかもしれない。平成27年度は細胞外マトリックスの変化と筋ーマクロファージの性質の変化に関して検証を進める。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] A treadmill exercise reactivates the signaling of the mammalian target of rapamycin (mTor) in the skeletal muscles of starved mice2015

    • 著者名/発表者名
      ong-mei Zheng, Zehua Bian, Norihiko Furuya, Mitsue Takeda-Ezaki, Juan Alejandro Oliva Trejo, Katsuyuki Takahashi, Yuka Hiraoka, Reiko Mineki, Hikari Taka, Shin-ichi Ikeda, Masaaki Komatsu, Tsutomu Fujimura, Takashi Ueno and Junji Ezaki
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun

      巻: Jan 2;456(1) ページ: 519-526

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.11.118

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effects of sitagliptin on ectopic fat contents and glucose metabolism in type 2 diabetic patients with fatty liver: A pilot study2015

    • 著者名/発表者名
      Kageumi Takeno, Minako Kawaguchi, Risako Yamamoto, Fumihiko Sato, Shin-ichi Ikeda, Hikari Taka, Tsutomu Fujimura, Yoshio Fujitani, Ryuzo Kawamori and Hirotaka Watada
    • 雑誌名

      J Diabetes Investig

      巻: Mar;6(2) ページ: 164-172

    • DOI

      10.1111/jdi.12262

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Association between expression of FABPpm in skeletal muscle and insulin sensitivity in intramyocellular-lipid-accumulated non-obese men2014

    • 著者名/発表者名
      Minako Kawaguchi, Yoshifumi Tamura, Saori Kakehi, Kageumi Takeno, Yuko Sakurai, Takahiro Watanabe, Takashi Funayama, Fumihiko Sato, Shin-ichi Ikeda, Yuji Ogura, Norio Saga, Hisashi Naito, Yoshio Fujitani, Akio Kanazawa, Ryuzo Kawamori, and Hirotaka Watada
    • 雑誌名

      J Clin Endocrinal Metab

      巻: Sep;99(9) ページ: 3343-3352

    • DOI

      10.1210/jc.2014-1896

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PARK2/Parkin-mediated mitochondrial clearance contributes to the proteasome activation during slow-twitch muscle atrophy via NFE2L1 nuclear translocation2014

    • 著者名/発表者名
      Norihiko Furuya, Shin-Ichi Ikeda, Shigeto Sato, Sanae Soma, Junji Ezaki, Juan Alejandro Oliva Trejo, Mitsue Takeda-Ezaki, Tsutomu Fujimura, Eri Arikawa-Hirasawa, Norihiro Tada, Masaaki Komatsu, Keiji Tanaka, Eiki Kominami, Nobutaka Hattori and Takashi Ueno
    • 雑誌名

      Autophagy

      巻: Apr 1;10(4) ページ: 631-641

    • DOI

      10.4161/auto.27785

    • 査読あり
  • [学会発表] 運動後に増加するIL-6は筋GLUT4発現増加を介してインスリン感受性を亢進する2014

    • 著者名/発表者名
      池田真一、田村好史、筧沙織、河盛隆造、綿田裕孝
    • 学会等名
      第69回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      長崎大学
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-21

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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