研究課題
筋損傷を伴わない強度の一過性運動後のマウス骨格筋では、炎症細胞の集積を促すケモカインであるMCP-1、KCの発現・産生が亢進しマクロファージの集積が生じていた。しかしながら、このマクロファージは抗炎症性マクロファージであるM2マクロファージであった。このことは運動後の骨格筋内はマクロファージを抗炎症性のものへと成熟させる環境にあると考えられる。そこでまず骨格筋内におけるマクロファージのアナトミーを詳細に検討したところ、筋細胞の外周を覆っている基底膜と呼ばれる結合組織の外側にマクロファージは存在した。筋細胞は様々なタンパクを分泌することから、筋細胞が分泌するタンパクによってマクロファージが抗炎症型へとシフトすると考えていたが、タンパク質は基底膜を通過できないため、この考え方は否定された。次に、基底膜を構成する細胞外マトリックス成分変化がマクロファージの抗炎症型へのシフトに関与するのではないかと考えた。マクロファージの集積が生じる強度の運動をマウスに施し、マトリックスメタロプロテーアゼ(MMP)の発現量を半網羅的に継時的に検証を行った。その結果、MMP2および9の発現量増加が生じており、このことは運動によって基底膜のリモデリングが生じている可能性を示すものであった。今後は基底膜成分の増減を詳細に検討していく。また、筋に集積したM2マクロファージは運動による筋インスリン感受性亢進を制御している。この際に運動によって筋中・血中で増加するインターロイキン6(IL-6)が筋に作用することで糖輸送担体であるGLUT4の発現を増加させることによって生じていることを明らかにした。IL-6に対する中和抗体の投与により運動による筋インスリン感受性亢進がキャンセルされたことから、血中のIL-6増加が重要であると考えられた。
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