研究課題/領域番号 |
25350908
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
川中 健太郎 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (80339960)
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研究分担者 |
河本 絵美 長岡工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40634514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不活動 / ギブス固定 / ストレッチ / 骨格筋 / インスリン抵抗性 / 糖取り込み / AS160 / TBC1D1 |
研究概要 |
「不活動」は骨格筋のインスリン抵抗性を惹起する。今年度は、ラットのギブス固定モデルを用いて、不活動にともなって筋への機械刺激(ストレッチ)が減少することがインスリン情報伝達物質の働きを抑制することでインスリン抵抗性を引き起こす可能性について検討した。 ラットの片脚下肢を足関節角度160°の底屈位でギブス固定(底屈固定)すると、ヒラメ筋は短縮状態で固定されるので能動的に筋収縮できないだけでなくストレッチによる機械刺激を失う。6時間の底屈固定後、底屈固定脚のヒラメ筋におけるインスリン刺激による糖取り込み速度は、対側の非固定脚の筋に比較して57%低下した。また、インスリンで刺激しない場合のBasal糖取り込み速度も72%減少した。そして、底屈固定脚のヒラメ筋では、Aktキナーゼ活性の低下とともにAS160のThr637残基ならびにSer588残基のリン酸化レベルが減少しており、これが底屈固定によるインスリン抵抗性を説明できる可能性がある。一方、Basal糖取り込みの低下はTBC1D1のSer237残基リン酸化の低下によって説明できるかもしれない。 また、ラットの片脚下肢を足関節50°の背屈位でギブス固定(背屈固定)すると、ヒラメ筋は伸展状態で固定されるので能動的に筋収縮できないもののストレッチによる機械刺激を受ける。そして、6時間の底屈固定と背屈固定による影響を比較したところ、インスリン刺激による糖取り込み速度に差はみられなかった。つまり、ストレッチを加えても底屈固定によって引き起こされるインスリン抵抗性を防止することはできなかった。しかし、Basal糖取り込みは背屈固定が底屈固定よりも高かったので、ストレッチは底屈固定によるBasal糖取り込み低下を一部防止できると考えられる。 このように、不活動による骨格筋インスリン抵抗性はストレッチ不足によるものではないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ラットのギブス固定モデルを用いて、「不活動にともなって筋への機械刺激(ストレッチ)が減少することがインスリン情報伝達物質の働きを抑制することでインスリン抵抗性を引き起こす」との仮説に基づいて検討を行った。ほぼ当初の計画通りに実験を行い、国際的学術論文への投稿も可能な状態になった。これらを考慮して、「おおむね順調に進展している」との評価を行った。しかし、実験結果は仮説とは異なり、「不活動による骨格筋インスリン抵抗性はストレッチ不足によるものではない」という結論が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
仮説とは異なり、「不活動による骨格筋インスリン抵抗性はストレッチ不足によるものではない」との実験結果が得られた。今後は、応募申請書にも記載していたとおり、「不活動ではエネルギー消費量が減少するので、過剰となった栄養素が筋内に脂質として蓄積することで炎症性シグナリング(JNK, p38, ERK, IKKなど)が活性化され、それにともなってインスリン抵抗性が生じる」との仮説を検証する。また、「不活動由来に何らかの遺伝子発現が惹起され、その遺伝子産物の働きを介してインスリン抵抗性が引き起こされる」との仮説に基づいて、不活動遺伝子の探索を行う。
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