研究課題/領域番号 |
25350911
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30508958)
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研究分担者 |
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10368532)
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ChREBP / 転写因子 / 糖代謝 / 酸化ストレス / 生活習慣病 |
研究概要 |
メタボリックシンドロームの発症機序には転写因子を含む代謝調節の異常が深く関与しており、転写因子の活性をコントロールすることで、脂質・糖代謝を改善する治療法の開発が進められている。 解糖系、脂質合成系の調節酵素の遺伝子発現を促進する転写因子がChREBPである。われわれは高グルコースに曝露されて惹起される酸化ストレスもChREBPの転写活性に影響を及ぼすという最近の知見に基づき、その活性化機構の解明を通して肥満予防や糖尿病治療の為の医薬品や治療法の開発を目指すことを目的とした。 2型糖尿病は膵b細胞の障害によりインスリン抵抗性とインスリン分泌に異常をきたすわけであるが、そのメカニズムとして解糖系の亢進により電子伝達系が活性化され活性酸素が増加することと、解糖系の最終産物であるピルビン酸を基質とし遊離脂肪酸が増加することが分かっている。つまり、高グルコース下における酸化ストレスには解糖系の亢進が深く関与していることになる。 そこでまず、酸化ストレスがChREBPの転写活性を促進するのかどうかを確認した。HEK293細胞を培養し酸化ストレスを与えるためにH2O2を培養液中に添加した。12時間後、ルシフェラーゼアッセイを行い転写活性を測定した結果、濃度依存的に転写活性が増加していることが確認された。さらにGFPタグをつけたChREBPを強発現し、その細胞内局在を蛍光顕微鏡で観察したところH2O2処理によりChREBPが核内へと移行していることが分かった。以上のことからChREBPは酸化ストレス(H2O2処理)に応答し、転写が活性化されることになる。 酸化ストレスによりChREBP自身のmRNA発現量が増減するのかを検討するために、現在qRT-PCRにて測定を進めており、同時にプロモーター領域を解析することで酸化ストレスに応答するエレメントが存在するのか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は①酸化ストレス(H2O2およびその他の活性酸素種)によるChREBPの転写活性化機構の解明、②酸化ストレスのモデルマウスを使用し、個体におけるChREBPの発現についての検討を行うことである。 ①については酸化ストレスにより、転写活性が上がることをすでに見出しておりおおむね順調に進展していると考える。また②についてもモデルマウスとして抗酸化酵素のひとつであるSOD1を欠損したKOマウスを使用し、臓器別にChREBPの発現パターンを解析中である。 今年度は、上記の結果をさらに発展させ転写活性化機構の解明を検討することである。特にマウスを使った研究が中心となってくるが、基礎となるデータは見出していることからも、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
酸化ストレスとして、H2O2を使用し、ChREBPの核内への移行、ターゲットDNAへの結合、つまり転写の活性化を見い出したわけだが、今後はその他の酸化ストレスにも応答するのかを検討する予定である。 あわせて、先に報告したO-GlcNAc化の修飾部位を特定するとともに、その詳細な構造を解析する予定である。O-GlcNAc修飾によりChREBPの細胞内局在が変化することは判明しているので、より具体的な核移行のメカニズムを解明することを目指す。 以上のように酸化ストレスによる活性化メカニズムと、O-GlcNAc修飾による核移行メカニズムの両面から、従来より提唱されているグルコース応答による転写活性化以外の新規活性化メカニズムの解明を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
酸化ストレスによるChREBPの転写活性を、特にルシフェラーゼアッセイにより測定したが、予想以上に実験が進み、成果を得た。よって当初の計画より早く、予定していた研究を終了したために試薬購入の予算に余裕が出た。また購入を予定していた設備備品が修理で済んだこともあり、次年度使用額が生じた。 交付申請時に記載したとおり、主にはウエスタンブロッティングに使用する抗体、細胞培養器具類(ディッシュ、ピペットなど)、細胞培養試薬(血清、培地など)、遺伝子実験試薬(制限酵素、PCR用関連試薬など)、各種代謝産物の測定キット(中性脂肪測定キット、グリコーゲン測定キットなど)、質量分析用関連試薬、転写活性測定試薬(ルシフェラーゼアッセイ試薬、DNAバインディング試薬など)に使用する予定である。 また来年度以降に、質量分析装置を用いてChREBPの翻訳後修飾の一つであるO-GlcNAc構造を解析する予定であるので、そちらの試薬購入に予算の配分を充てる。さらにChREBPに対する抗体を作製中であるので、予算を配分する。 その他、消耗品として、マイクロチューブ、遠沈管(15mlや50mlなど)、測定用マイクロプレート、チップ類も購入する予定である。
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