研究課題/領域番号 |
25350912
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
橋田 誠一 徳島文理大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10156268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 腎症 / アディポネクチン / バイオマーカー / 免疫測定法 / 尿 |
研究実績の概要 |
糖尿病性腎症は、我が国における透析導入の原疾患の第1位であり、透析導入数の約半数を占めている。また、糖尿病患者の透析導入後の生命予後は不良であり、5年生存率は約50%とされている。そのため、糖尿病性腎症の発症を防ぐことが急務である。 一般にCKD(慢性腎臓病)の診断には、微量アルブミン尿を含む蛋白尿が重要な診断基準となっている。しかし糖尿病性腎症では、微量アルブミン尿や蛋白尿を呈していなくても、GFR(糸球体濾過量)の低値を示す患者が多数存在していることが明らかとなってきた。また、正常アルブミン尿であるにも関わらずGFRの低値を示す症例は、典型的なCKDとは腎障害の発症や進展機序が異なる可能性が示唆されて来た。そのため、アルブミン尿に換わる糖尿病性腎症診断のための新しい評価法の開発が求められている。 研究代表者らは、超高感度免疫測定法を開発し、これまでのELISAでは測定出来なかった多くの血中バイオマーカーの尿における測定を可能としてきた。その中で、尿中アディポネクチンは、微量アルブミン尿の検出されない糖尿病患者尿中においても、肥満患者や健常者に比べ有意に高値を示すことを発見した。また、この尿中アディポネクチンは尿中アルブミンと非常に良く相関しており、微量アルブミン尿の検出されない糖尿病患者尿中にも高値を示す例が見られた。さらに、尿中アディポネクチンは、腎機能推定指標(eGFR)と有意に逆相関していた。一方、尿中アルブミンにはeGFRとの相関は見られなかった。 これらのことより、尿中アディポネクチンの早期糖尿病性腎症の発症マーカーとしての有用性が示唆されている。そこで、この尿中アディポネクチンが新しい糖尿病性腎症の発症マーカーとなりうるか検証することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らは、これまでに以下の様な結果を得ている。 1)ELISA法比べ3,000 高感度のアディポネクチン測定法を開発し、非肥満非糖尿病群(NOND)、肥満非糖尿病群(OND)、糖尿病患者群(DM)は、NOND、ONDに比べ DMで尿中アディポネクチンが有意に高値を示す(P<0.05,0.001)ことを明らかにした。また、尿中アディポネクチンは尿中アルブミンと非常に強い相関関係が認められ(r=0. 81、p<0.001)、さらに微量アルブミン尿を示さなかった糖尿病患者の中に尿中アディポネクチン高値を示す例を認めた。 2)腎機能推定指標(eGFR)が低下傾向の対象者では、尿中微量アルブミンの有無に関わらず、尿中アディポネクチンが高値を示し、その大半が低分子3量体のアディポネクチンであることが分かった。さらに、健診で訪れた70名の日本腎臓学会の慢性 腎臓病(CKD)のステージ別分類を行い検討したところ、尿中アディポネクチン値はステージG1とステージG2間で有意な上昇を示した。一方、尿中アルブミン値は、 ステージG1とステージG2間では有意な変化は見られず、ステージG2とステージG3間において、有意な上昇 を示した。この結果により、尿中アディポネクチンは尿中アルブミンに比べ、早期に腎障害を検知しうる可能性が示された。 3)2014年度から徳島市周辺地域の成人健常者(1000名程度)を対象とする非介入型コホート試験に参画し、早朝第一尿を採取し、2014年度の尿試料の採取を終えた。 4)上記、コホート試験試料および、今後の測定増を鑑み、自動測定機器とキットの作成に取りかかった。現在プロトタイプの自動測定機器の開発に成功し、短時間(2時間)測定を可能とした。2015年度中には、市場投入する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、早期糖尿病性腎症の指標としての尿中アディポネクチンの有用性を示す結果が蓄積している。そこで、糖尿病患者の重症化に伴い賢機能が低下するに従い、尿中アディポネクチンがどのように変化するか検討する必要がある。2014年度より徳島地区の非介入型コホート試験に参画しており、その尿試料を用い、この尿中アディポネクチンの早期賢障害指標としての評価を行っている(5年計画)。 一方、研究代表者らは、糖尿病予備群を対象とした「糖尿病予防教室」を主催しており、エネルギー減バランス食や低炭水化物食による生活指導を行っている。その際の尿試料を用い、血糖値の改善とこの尿中アディポネクチンの関連についても検討を始めている。 コホート試験試料および、今後の測定増を鑑み、自動測定機器とキットの作成に取りかかった。現在プロトタイプの自動測定機器の開発に成功し、短時間(2時間)測定を可能とした。2015年度中には、市場投入する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
この研究はこれまでの研究を継続したものであるため、消耗品(抗体や試薬、試験管、チップ等)はこれまでのものを使用した。その ため、物品の購入が少なくなり、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、試料数が大幅に増加する為、測定に必要な物品(抗体や試薬、試験管、チッブ等)の購入に使用する。今年度は、繰越金も含め、使い切る予定である。
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