研究課題/領域番号 |
25350915
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
太田 雅規 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (70341526)
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研究分担者 |
江口 泰正 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (70512185)
大和 浩 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (90248592)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 寒冷適応 / 有酸素運動 / イリシン / 無作為化比較試験 / 季節変動 |
研究概要 |
本研究では、以下の2つの課題を示すことを目的として行っており、平成25年度は以下の成果を得ている。 1.慢性的な寒冷曝露下での身体活動の有無によるイリシンの発現の違い 寒冷環境下で作業する群(N=18)と、常温帯で作業する群(N=20)から得られた血液サンプルを用いて血漿中イリシン濃度を測定した。その結果、寒冷環境下で作業する群の方が有意に血漿中イリシン濃度が高いことが示され、イリシンが寒冷適応に寄与している可能性が示唆された。さらに、安静時の除脂肪体重当たり(筋肉量当たり)の代謝量と血漿中イリシン濃度との関連を検証したところ、常温帯で作業する群では有意な正の相関を認めたが、寒冷環境下で作業する群では有意な相関を認めないという結果を得た。イリシンは筋肉から分泌されるホルモンであり、常温帯ではイリシンが多いほど筋肉量当たりの代謝量は大きいこと、寒冷環境下では、筋肉以外の要因が関与していることが示唆された。なお、仕事における身体活動の有無では有意な差を認めなかった。 2.有酸素運動の介入時期による効果の違いとイリシン発現との関係 10月から12月の寒くなる時期にかけて、10週間の有酸素運動による無作為化比較試験を行った(介入群N=11, コントロール群N=20)。その結果、有酸素運動を行った群において有意に血漿中イリシン濃度が増加し、コントロール群では増加する傾向にあるものの有意な変化を認めなかった。イリシンは運動により増加することを無作為化比較試験で示すことができ、さらに、寒くなる時期にはイリシンが増加する傾向にあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2つの課題の検証を目的として進めている。 課題の一つである「慢性的な寒冷曝露下での身体活動の有無によるイリシンの発現の違い」については、計画通りサンプルを得ることができ、寒冷曝露下で血漿中イリシン濃度が増加する結果を得た。この内容については、平成26年5月の国際学会で発表する予定である(Wellbeing at Work, Copenhagen)。 2つめの課題「有酸素運動の介入時期による効果の違いとイリシン発現との関係」についても、計画通り、10月から12月にかけての寒くなる時期に向けての無作為化比較試験による運動介入は終了した。有酸素運動により血漿中イリシン濃度が増加すること、運動をしていないコントロール群でも寒くなる時期に血漿中イリシン濃度が増加する傾向にあることを示した。本結果についても、平成26年7月の国内学会で発表予定である(日本循環器病予防学会、京都)。 以上のように、研究計画はおおむね順調に進んでおり、成果発表を行うに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
一つ目の課題である「慢性的な寒冷曝露下での身体活動の有無によるイリシンの発現の違い」については、仕事中の運動習慣だけではなく、日常生活の運動習慣の有無も検討に入れ、更なる解析をすすめていく。また、論文化も平成26年度に行っていく。 もう一つの課題である「有酸素運動の介入時期による効果の違いとイリシン発現との関係」については、平成26年度に暖かくなる時期に向けての無作為化比較試験による運動介入を実施する予定である。 なお、並行して、上記2つの課題について、生活習慣病関連因子、一酸化窒素代謝物、酸化ストレスやレプチンとの測定を行い、イリシンとの関連性の検証を行い、生理的意義を示していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
一酸化窒素代謝物の測定を考えていたが、平成26年度のサンプルと一緒に一度に測定を行う方が、測定精度の面でも良いと考えたため。 平成26年度に実施する運動介入研究で得られるサンプルと、平成25年度に得られたサンプルを、一度にまとめて測定する際に使用する計画である。
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