研究課題/領域番号 |
25350917
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
津吹 聡 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 専門職研究員 (20217368)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / カルパイン / カルパスタチン / 二次元電気泳動 / 等電点電気泳動 |
研究概要 |
生体内で重要な働きをしているタンパク質分解酵素であるカルパインの異常活性化は、アルツハイマー病(AD)をはじめ様々な病気の発症に関与しているので、異常活性化したカルパインの生体内基質を同定することは、病気の予防や治療に結びつく端緒となる。生体内のカルパイン活性は、内在性特異的阻害剤であるカルパスタチンによって制御されているので、カルパスタチン遺伝子を破壊させてカルパインの活性制御を消失させたマウスと野生型マウスの海馬の初代培養細胞を使用して、異常活性化したカルパインの生体内基質の同定を試みた。海馬は記憶に関与し、ADにおいては多大な損傷を受ける部位であり、初代培養細胞は生体から採取されてあまり時間がたっていないことから、生体と同様な挙動を示すことが期待された。神経伝達物質であるグルタミン酸を添加後0分、60分の細胞を回収し、細胞質画分、膜・オルガネラ画分、核画分、細胞骨格マトリックス画分の4つに分画した。グルタミン酸刺激により、哺乳動物脳内ではシナプス伝達や記憶形成に関与するグルタミン酸受容体が活性化し、カルシウムイオンの流入が起こり、カルパインが活性化する。タンパク質以外の物質を除去後、ラベリング用液に溶解し、タンパク定量後、各画分を蛍光試薬でラベルし、DryStripに添加し、等電点電気泳動後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった。この方法は、比較する試料を異なる蛍光試薬でラベルし、混合した後電気泳動を行なうことで、1枚のゲル上で各試料中に含まれるタンパク質同士を比較することができ非常に有効な解析手段であった。上記のような一連の実験手法を確立し、カルパスタチン遺伝子欠損マウスと野生型マウス間およびグルタミン酸添加の有無での各画分のタンパク質スポットを蛍光検出システムにて比較・解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連の実験手法が確立できたので、量的に変化するタンパク質を順次同定することが出来る。現在、カルパスタチン遺伝子欠損マウスと野生型マウス間およびグルタミン酸添加の有無での各画分のタンパク質スポットを蛍光検出システム(Typhoon 9400)にて比較・解析している。
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今後の研究の推進方策 |
確立させた実験手法を最大限に活用し、各画分に含まれるタンパク質同士の比較・解析を順次行なう。量的変化が見られたタンパク質をトリプシン消化し、高速液体クロマトグラフィー質量分析法により解析し、タンパク質データベース(MASCOT)を利用して同定する。量的に変化するタンパク質は微量であることが予想されるので、微量サンプルの効率的消化に威力を発揮する試薬であるProtease Maxを使用する予定である。同定したタンパク質はさらに抗体を使用して検定する。
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