脂肪肝発症における肝細胞と免疫とのかかわりについて調べる目的で培養系を用いて解析を行った。マウスマクロファージ由来培養細胞とマウス肝臓由来培養細胞との共培養において、アルブミン結合脂肪酸の添加により、IL-1bやIL-6といったサイトカイン遺伝子のmRNA発現量がマウスマクロファージ由来培養細胞において増加したが、M1やM2マクロファージに特徴的な遺伝子の発現量には全く変化がみられなかった。また、FGF21等の分子のmRNA発現量がマウス肝臓由来培養細胞において増加した。しかし、用いる肝臓由来培養細胞によっても結果が異なり、肝細胞内の何らかの因子が関与している可能性が示唆された。 また、脂肪肝発症、増悪化、非アルコール性脂肪性肝炎発症と食事内容についての検討を行う目的でマウスを用いて研究を行った。雄性ddYマウスに高脂肪(脂肪60エネルギー%)・高スクロース食を長期投与した結果、肝臓において脂肪肝の増悪化のみならず、線維化を示す分子のmRNA増加など肝炎の症状がみられた。また、血清マーカーに関しても肝炎を発症していることが確認された。同じ割合の脂肪を含む高脂肪食(脂肪60エネルギー%)を投与したマウスでは、脂肪肝を発症していたものの肝炎は発症しなかった。したがって、脂肪肝発症から非アルコール性脂肪性肝炎への進展には、脂肪のみならずスクロースの投与も必要であることが明らかになった。 さらに、高脂肪食摂取により肥満した雄性ddYマウスに超高脂肪・超低炭水化物食を投与すると、初期においては摂食量の減少から体重減少が観察されたが、長期投与により体重が増加に転じ、同時に膵臓からのインスリン分泌に変化がみられることが明らかになった。
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