研究実績の概要 |
写真を使った研究: 邪推傾向が強いと対人関係の維持に支障が生じ,他者への攻撃傾向が増進すると考えられる。多様な解釈を許す写真刺激に対する反応から邪推傾向をどの程度予測できるかを検討した。健常大学生105人を対象に妄想傾向(質問紙の日本語版パラノイア・チェックリスト)と悪意認知傾向(日本語版Buss-Perry攻撃性質問紙)を測定し, その平均を邪推得点とした。テスト写真(33枚)は独自に作成した。実験参加者は写真について,何か“悪いこと”をしそう,“悪口”を言っている,の2つの観点で5段階評価(1:そう思わない~5:そう思う)した。邪推得点の個人差のうち約20%を写真に対する反応から説明できた。多様な解釈を許す写真を刺激材料として邪推傾向をある程度予測できた。この成果は2015年6月の東北心理学会で発表された。 脳波を使った研究: 被害妄想の程度が暴力行動傾向と正の相関にあること(Applebaum et al., 1999),前頭前部帯状回の活性度が低い囚人男性は釈放後の反社会的行動の生起率が高いこと(Aharoni et al., 2013)が報告されている。そこで,被害妄想的観念の程度と大脳活動の関連を事象関連電位(ERP)を使って調べた。具体的には, 健常大学生(n = 28)を対象にEriksen課題のエラー試行時の前頭前部帯状回の活性度を測定し,さらに同じ実験参加者に対して被害妄想的観念の生起傾向と攻撃傾向を上記の質問紙で測定し, 両者の関連を調べた。その結果,被害妄想的観念の生起傾向が強い者ほど攻撃性も強く(相関係数r = 0.53),同時に,前頭前部帯状回の活性度が低かった(r = 0.57)。被害妄想的観念の強い者ほど前部帯状回の活性度が低いという結果が得られた。この成果は2016年5月の日本生理心理学会で発表する予定である。
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