研究課題/領域番号 |
25350921
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
野口 康彦 茨城大学, 人文学部, 准教授 (30434541)
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研究分担者 |
青木 聡 大正大学, 人間学部, 教授 (40327987)
小田切 紀子 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (10316672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 親の離婚 / 面会交流 / 発達 |
研究概要 |
平成25年度の主な研究内容は、文献研究と量的調査研究であった。量的調査研究では、親の離婚を経験した青年を対象とし、面会交流の有無や頻度と自己肯定感及び心理的well-being(2つの下位尺度)との関連性について明らかするために質問紙による調査を実施した。調査協力者は関東及び九州の6つの大学の大学生445名であった。調査時期は2013年10月から2014年1月にかけて行った。455名の調査協力者のうち親の離婚経験者は54名となり、有効回答者の約11.8%となった。面会交流について、「過去にはあったが現在はない」と「全くない」の2つを「面会交流なし」群(32名)とし、「その他」の2名を除く5つを「面会交流あり」群(20名)とした。この2群について「自己肯定感尺度」、「積極的な他者関係」、「環境制御力」の平均値の差についてt検定を行った結果、2つの間には有意差はみられなかった。また、「面会交流あり」群において、「満足している」群(13名)と「満足していない」群(4名)の中央値の差についてマン・ホイットニーのU検定を行った結果、「自己肯定感」において1%水準で「満足している」群に有意差が見られ、また「積極的な他者関係」において5%水準で「満足している」群に有意差が認められた。さらに、「満足度」と「宿泊ありなし」についてカイ二乗検定を行ったところ、5%水準で有意差が見られ、「宿泊あり」のほうが「満足度」が高いと解釈できた。親の離婚を経験しても大学に進学できた青年は、心理発達において親の離婚の影響が比較的少なかったと言えるだろう。また、データ数は少ないが、親の離婚経験者における面会交流の実際について量的に把握できたことは貴重な資料となった。 なお、調査結果については、平成26年8月23日~26日に開催される「日本心理臨床学会第33回大会」にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の途中ではあったが、研究分担者として東京国際大学の小田切紀子教授が追加されたことにより、調査の対象となる大学が増えた。国立大学2校と私立大学4校において質問紙による調査が施行できたことは収穫であり、おおむね順調に進展していると評価できるであろう。ただし、調査協力者が1つの大学につき50人から100人程度であったことから、調査協力者の総数については当初の予想よりも少ない人数となってしまった。その結果、親の離婚経験者の数が約50人となってしまい、分析を妥当性を検証するうえでは、若干少ないデータとなっている。その点を補うため、量的調査については、平成26年度の早い時期に再度の質問紙調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
先述したように、平成25年度の調査研究を補足する意味で、引き続き平成26年度も量的な調査を施行する。質問紙調査の結果を踏まえながら、質問紙調査に協力してもらった大学生で個別的な調査に協力してもらえる人に対して質的な調査を行う。質的な調査の目的は、面会交流のあり方によって子どもの心理的健康に及ぼす影響の差異や面会交流がない方が良いのはどのような状況においてであるのかについて検討する点にある。 質的な調査方法としては、①PAC(Personal Attitude Construct:個人別態度構造)分析を用いた質的調査研究と②複線径路・等至性モデルを用いた方法の2つを採用したい。PAC分析は当事者の内面構造を把握するのに向いている調査方法である。複線径路・等至性モデルを用いた調査については、別れた側の親との面会交流がなかった人が、どのような経緯で親との面会交流を始めるようになったのか検討するために用いるものである。PAC分析を用いた調査では4~5名、複線径路・等至性モデルを用いた調査についても、4~5名を対象者として考えている。調査の協力者は十数名の大学生が協力の意向を申し出ており、平成26年度の1年間で終了の予定である。 また、面会交流を支援しているNPO団体など、第三者機関を対象としたインタビュー調査を行う予定であり、今年度中に2か所の施設を訪問する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由として最も大きな要因は、外国旅費として計上していた監督付き面会交流ネットワークの調査のための旅費を使用しなかったためである。研究計画の当初において、面会交流支援を行っているアメリカあるいはヨーロッパへの渡航を計画していたが、スケジュールの調整が困難であったため、前年度は見送った。また、国内の大学を対象とした量的な調査においても、調査対象となった大学が関東が中心となったため、調査に要する旅費が当初の計画よりもかからなかったという点もある。 上述したように、面会交流支援の実際については海外の状況や実態を参考としたいので、前年度使用できなかった外国旅費については、今年度あるいは次年度に使用したい。また、今年度は国内において10人程度に個別的な調査を施行する予定である。また、面会交流を支援する国内の第三者機関への訪問を予定していることから、国内の旅費については一定額の使用を見込んでいる。
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