本研究の目的は、学校の校舎、教室などの施設整備や環境整備といった物理的要因が、児童生徒、特に知的障害や発達障害などの特別な教育ニーズをもつ子どもの学びと遊び、人との関わり方といった成長発達に与える影響を、自然素材活用という物理的環境調整による行動変容の観点から検討することである。 平成25年度は主に文献調査を行った。平成26年度は、調査対象校であるF特別支援学校において、小学部の中庭にウッドチップを敷き詰めたスペースを観察場所とし、児童の遊びと学びの様子を行動観察した。担任と元担任教師にインタビュー調査を行い、中庭を活用した学習活動の工夫、1年間の活動の感想、子どもたちの行動変容に関する気づき、などを尋ねた。子どもの障害特性と個性の違いにより、中庭や木質化したスペース・教室での時間の過ごし方に違いがある可能性が示唆された。 海外調査については、ドイツ・ミュンヘン市とフィンランド・バンター市の複数の就学前施設・子育て支援センター・小学校などを訪問し、自然素材を活用した学びの環境づくりに関して、視察と関係者へのインタビューを実施した。 平成27年度は、調査対象校のF特別支援学校中学部3年生の1年間の木工活動を通して、自然素材を使った学習の活用による生徒の成長を論文にまとめた。また小学部児童の「遊びの指導」を観察して、学校木質化の効果評価の観点を、ウッドチップ広場の活用と子どもの遊びの変容(遊び方、内容、先生や友達との関わり方)に絞り、教師対象の質問紙調査を実施した。 平成28年度は、小学部の児童を対象とした観察の継続、ウッドチップグラウンドの特徴のまとめ、4年間の研究のまとめを行った。学校木質化によって、「遊びと学びを促進する機能」「コミュニケーションを促進する機能」「居場所としての機能」が期待できることが示唆された。
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