研究課題/領域番号 |
25350923
|
研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
佐藤 朝美 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 講師 (70568724)
|
研究分担者 |
佐藤 慎一 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (10410763)
荒木 淳子 産業能率大学, 情報マネジメント学部, 准教授 (50447455)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 家庭の教育力 / eポートフォリオ / 親性 / 生涯発達 / 親の発達 |
研究実績の概要 |
本研究は、親の発達に重要な「親としての気づき」と「親子の相互作用」を促す省察的な家族対話を引き出すファミリー・ポートフォリオを構築し、実践と評価を行うものである。 今年度は、ファミリー・ポートフォリオの機能要件の1つとして、子どもの写真や映像、日記等の成長記録の中で、子どもの制作物を記録することに着目し、スマートフォンアプリ“ツクルミュージアム”を検証した。具体的には、親性の要素「自己への認識‐親役割の状態」のサブカテゴリー[a:子育てへの感情(欲求や充実感)b:子どもとの時間(対話や関わり)]、「子どもへの認識」のサブカテゴリー[c:子どもの内面(欲求や気持ち、性格や個性)d:子どもの発達(発育の段階や予測)]を促しているかの分析を行った。 その結果、“ツクルミュージアム”の機能である展示室の作成や観賞が「自己への認識-親役割の状態:子育てへの感情(欲求や充実感)/子どもとの時間(対話や関わり)」「子どもへの認識-子どもの内面(欲求や気持ち、性格や個性)/子どもの発達(発達段階や予測)」に寄与する可能性が示唆された。アプリの使用が、保管の問題を解消するだけでなく、成長記録を行う親の責務を果たす肯定感を生み、子どもへの関心を抱くきっかけとなっている様子がみられた。また、制作の過程を記録することで子どもとの関わりが増え、子どもから親に作品の登録依頼があり、子どもと一緒に観賞しながら、次の作品に対する課題を対話する様子がみられた。さらに、作品への思い入れを子どもから聞いたり、展示室やリストの観賞から特徴を把握する等、子どもの内面に触れるきっかけとなっていた。作品を時系列で観賞することで子どもの発達について考える様子もみられた。以上のことから、アプリの使用が親性の要素を促したと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ファミリー・ポートフォリオの構築を目的としている。子どもの成長記録の中でも、子どもが制作したものを記録していくことは重要であると考える。特に未就学児においては、絵画のみならず、立体物を多々家庭において作成する。そのような作品をポートフォリオ化して蓄積することは、子どもの成長を振り返る記録の大事な要素である。 今年度は、ファミリー・ポートフォリオの機能の一部として、Child’s Museum アプリ(プロトタイプ)を作成し、その内容について、ED-MEDIA国際会議(World Conference On Educational Media & Technology)においてポスター発表を行った。この発表はポスターアワードを受賞した。 次に、アプリを実際に親8人に2週間ほど使用してもらい、質的な評価を行った。本研究結果は、日本教育工学会ショートレター論文としてまとめ、投稿を行っている。 これらの結果を踏まえ、次年度はファミリー・ポートフォリオ全体を構築する予定である。それらを用いた評価実践を行い、知見については論文としてまとめる予定である。 以上の状況からおおむね順調に計画が進んでいると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、ファミリー・ポートフォリオの一部分としての制作物を記録するプロトタイプを作成し、実際にデータを蓄積していくことが可能であるか、さらには親性の向上に寄与するのかについて、形成的な評価を行った。効果が示唆されたと同時に、課題も見えた。親の記録に対する姿勢や取り組み方の違いについてである。具体的には、子どもに目が行きつつも親である自己への役割や成長の自覚にまで至っていない親、親としての責任を感じ記録を付けるが、子どもとポートフォリオの共有を楽しむ活動までに至っていない親、長期的な視野での成長を概観するまでに至っていない親等である。 次年度は、今年度の結果や課題を踏まえ、ファミリー・ポートフォリオ全体を設計し、実装する予定である。特に、制作物の記録では範囲外であった「親役割以外の状態(夫や妻といった役割をもち社会で働く存在認識を示し、自己肯定感や社会との関係性を含む)」に関する親性についても支援を検討する予定である。構築した環境については、多くの家族に長期的に使用をしてもらい、実際に「親としての気づき(PA)」と「親子の相互作用(IIT)」をもたらしているのか、「親性」の向上とともに検証する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度のプロトタイプ作成が遅れたことにより、検証が本年度になったことから、本システムの完成が次年度に延びた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、プロトタイプの検証より得られた課題を反映した本システムの作成を行う。
|