本研究は病弱児の教育的環境として重要な意味を有する院内学級におけるキャリア発達支援プログラム開発を目的として行われた。最終年度にあたる平成27年度は、下記の通りプログラム開発に従事した。
1.院内学級における病弱児対象の新たなキャリア発達支援プログラム開発:26年度末に訪問した米国ボストン小児病院における退院支援プログラムより、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下、CLS)が復学先に出向いて、教員・クラスメート対象に病状や教育上の留意点を説明することがあるとの情報を得た。しかし、我が国においては、CLSは全国でも8名しか配置されておらず、その援助を広く期待することは難しい。病児の社会的自立のひとつの節目が退院時であること、また今後も環境移行のたびに周囲の支援を引き出していくことが欠かせないことの2点から、「自分の病気理解」「援助要請」のベースとなる自己理解とコミュニケーション力を育てることを目的とするプログラムを考案し、東京都内の院内学級において実践し、内容について再検討を行った。さらに、別の病弱教育機関における校内研究と連携・協働しつつ、自立活動を中心としつつも教科教育をも含めた、キャリア教育授業づくりに従事し、「キャリア教育実践事例集」として冊子にまとめた。
2.総括:本研究の成果を養護教諭を主な読者とする雑誌への論文1本、及び2本の学会発表として公表した。さらに、特別支援学校教諭対象とする研修・講演(6回)においても研究知見を紹介し、現場への幅広い浸透を目指して活動した。開発したプログラムについての紹介は、近日中に論文として発表していく予定である。また、研究を進める中で「越境」「ゲーミング・シミュレーション」という2つの鍵概念の本研究課題への応用可能性に関する気づきを得、今後の展開への手がかかりも得ることができた。
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