研究課題/領域番号 |
25350929
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
田中 生雅 愛知教育大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10262776)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抑うつ / メンタルヘルス / 学校保健 |
研究概要 |
大学生の抑うつ傾向とセルフケア状況、学内外の支援環境との関連を調べる為に平成25年度定期健康診断を受診した愛知教育大学大学生2870名(新入生、大学院生を除く)を対象に抑うつ不安尺度調査(K10)、ストレスや健康維持への取組と効果に関するアンケート調査、また、中793名にQOL-26調査を行った。検討では、調査に同意し回答の得られた2405名(男性1040名、女性1365名、有効回答率83.8%)の結果を解析した。 K10の中間値は14.0ポイントであり、女性で有意に得点が高かった。カットオフ指標である25ポイント以上の学生は全体で218名(男性105名、女性113名)であった。「大学生活にストレスを感じますか?」の質問に「はい」は1228名(52.9%)、「メンタルヘルスの健康維持のために取り組んでいることはありますか?」の質問に434名(18,7%)が「はい」と回答した。K10 が25ポイント以上(高得点群)と未満(健常群)の群別の検討ではストレスへの質問では、高得点群で「はい」の回答が多く有意差が見られた。取り組みの内訳は全体で多い順より、「恋人や友人と話す(415名)」「眠る(373名)」「家族と話す(343名)」「おいしいものを食べる(342名)」であった。また他の質問で高得点群では「死のうとした」「休退学を考えた」の回答傾向が高かった。 調査学生の約1/5が日常生活の中でメンタル面のケアをしており、「家族や友人との対話」「睡眠」「おいしい食事」で効果を感じている結果であった。学内サポート、医療機関のサポートなしに日常生活の中で健康を維持できる学生がいることがわかったが、一方でメンタルヘルス上の失調の可能性がありながら何のケアもしていない学生も多数いることもわかった。本結果は第51回全国大学保健管理研究集会で発表した。現在内容の一部について論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した調査を無事実施できた。アンケート調査協力者は当初の予定対象者より多く、2500名ほどとなったが、予算範囲内で行うことができた。調査参加者の中で、心身の不調がある学生、アンケート調査者で「死にたくなる」など回答があり、自殺念慮があると疑われる学生について、調査時と調査後に呼び出し、保健指導と経過観察を行った。アンケート調査の一部については平成25年11月に開催された第51回全国大学保健管理研究集会で発表し、現在論文投稿中である。また、本研究に関連し、学内のFD(平成25年4月、愛知教育大学)にて「躁鬱症状を呈する学生」に関するレクチャーを行い、その内容「気分(感情)障害を呈する学生の実際と対応」について大学内紀要論文集(IRIS HEALTH 2013 vol.12)に発表できた。 平成26年度も同様のアンケート調査を学生定期健康診断時に実施する予定であり、既に準備は終了した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画と方法については、平成25年度と基本的には変わらないが、平成25年度のアンケート参加者は特に「セルフケアやメンタルヘルス支援環境の実態に関する調査内容」「K-10(不安よくうつ尺度)」調査では約2500名と大幅に増加した。よって、研究計画申請時には約1000名を対象とすると予定していたが、平成26年度の調査対象者も実施結果によっては大幅増となる可能性が高い。本件については、研究予算範囲内で対応可能である。 また、平成25年度の調査において、「死のうとした」など回答のあった学生の呼び出しを行い、実際には調査学生の中で自殺者は1名も発生しなかったが、平成26年度は「K-10高得点者」や「自殺念慮」学生についてより丁寧に追跡調査する予定である。他の学生についても3か年の研究調査、健康診断での結果を通じて経過観察を行う。健康を維持する学生の生活環境についても傾向を把握することとする。 また、平成26年度は研究内容の一部を国際学会で発表するため、応募を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究用の図書の購入が少額となった。また平成25年度は研究の実施が中心となり、学会発表も1回となった。このため旅費も計画よりも低額で抑えられた。調査用紙も平成25年度の購入は少額となった。 物品について、平成26年度は調査用紙も今年度の計画の100,000円を超えて購入する予定である。また、平成26年度もアンケート調査を平成25年度と同様の規模で実施する予定であり、アンケート集計について平成26年度の予算で使用する予定である。 また、平成26年度は国内での複数の学会での発表や国際学会での発表を予定しており、旅費は申請時の計画よりも高額が予想されるため、平成26年度使用額として残した予算を使用する。
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