研究課題/領域番号 |
25350929
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
田中 生雅 愛知教育大学, 保健環境センター, 教授 (10262776)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 健康診断 / 抑うつ / 自殺念慮 |
研究実績の概要 |
大学生の抑うつと心身の健康、QOL(Quality of Life)との関連を明らかにするために、2013年度に定期健康診断を受診した愛知教育大学生2870名、2014年度に受診した学生2918名を対象に抑うつ不安尺度調査(K10)、ストレスの有無、悲しみの感情に関するアンケート調査を行った。調査に同意し継続して2年とも回答した学生は1438名であった。このうち2年続けて「この1年で死のうかと真剣に悩むことがあった」と回答した学生27名(男性10名、女性17名)の結果を検討した。2014年度のK10がカットオフポイントの25点以上の学生は19名(70.4%)、「現在の学生生活にストレスを感じている」学生は23名(88.5%)であった。2014年度の健康診断結果では、要経過観察C以上の学生が14名(51.9%)であり、そのうち肥満が6名(42.9%)であった。3項目以上の心身の愁訴がある学生は11名であった。面談に応じた学生に特別な不適応や精神疾患の事例は認めなかった。また多くの学生は事後措置の呼び出しには応じなかった。自殺念慮が持続する学生は健康診断結果の要経過観察者が多かった。事後措置の時に内科学校医から精神科学校医への引き継ぎ時の工夫が必要であると考えられた。尚、本結果は第52回全国大学保健管理研究集会(慶応大学)で発表し、優秀演題賞を受賞した。 同研究内では、QOL-26調査を926名に実施しでき、721名の結果を得た。QOL-26調査結果はK10の結果と共に解析し男女差を中心にまとめ、米国精神医学会(63rd Institute on Psychiatric Services)にて発表した。また、昨年度のアンケート調査についての研究成果はCAMPUS HEALTH51(2) 「大学生の抑うつ傾向とセルフケアに関する検討」(平成26年5月発行)に論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究2年分のデータの解析が可能となり、「自殺念慮を有する大学生」に関する学会発表にて優秀演題賞の評価を得ることができた。「大学生の抑うつ」から懸念される「自殺念慮を有する学生」の研究へと進展することができた。また、米国精神医学会(APA)での学会発表を予定通り行うことができ、海外研究者との意見交換が活発に行えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も学生に同様のアンケート調査を予定しており、時系列的な検討、多角的な分析から「大学生の抑うつ」の「予防要因」「回復の条件」の同定、解析を予定している。定期健康診断の事後指導を通じて、抑うつを呈する学生の個別の経過観察を継続する中で、アンケート研究を補足する知見をうることが可能である。また、研究期間内で国内論文、海外投稿論文の作成を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケートの集計(外部委託)が予定より多く費用が掛かったという面があったが、物品や図書の購入が、現在までのところ少なめに推移しており予算が少し残っている。また、海外の発表を行ったがこの為の予算も予定より少額で済んだことも理由と考える。
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次年度使用額の使用計画 |
研究は順調に進んでおり、3年目のアンケート調査の集計に費用が掛かると考えている。また今年度も、国内、発表が可能であれば国外学会での発表を考えている。国内、国際雑誌の論文発表も予定しており、さらに図書等を購入し研究を進め、論文をまとめ上げるための予算として、本年配分の予算と合わせて使用する予定である。
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