本年度は、セーフな探究のコミュニティの理念に基づいた哲学対話を導入し、継続している沖縄県立高校において授業や課外活動に参画しつつ、対話やコミュニティ形成についての実地調査にくわえて、さらなる展開のための助言をおこなった。これら各地での学校での実践経験から、受験勉強というプレッシャーがない課外活動の時間に探究のコミュニティ形成をおこなうことにより、生徒や教員からのさまざまなニーズを引き出し、学校において教員と生徒が対等に向かい合うセーフな場づくりができることが確証された。このことは授業での学習と生活指導に偏重しがちな学校においてコミュニティ活動を活かしたあらたな教育の場を創造するための重要な機会となると考えられる。 同様に、昨年度に引き続き大阪府立高校においても同様の手法をもちいた授業を展開し、教員自身の手によって継続できる柔軟な対話プログラムの開発と検証をおこなった。とりわけ生徒だけでなく教員にとっても〈セーフティ〉が確保されるための媒介物としての教材作成の意義が重要であることを鑑みて、これらの教育現場での経験を活かして、コミュニティでの探究を深めるためのツールづくりを行い、ツール集「哲学者の道具箱」のプロトタイプおよびその完成版の制作にあたった。
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