研究課題/領域番号 |
25350933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
酒井 久美子 大分大学, 医学部, 助教 (60225753)
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研究分担者 |
千葉 政一 大分大学, 医学部, 助教 (20457633)
酒井 謙二 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50205704)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 行動解析 / マイクロアレイ / 脳 |
研究概要 |
近年の子ども達の学習障害や情緒障害の原因は何か?私たちは偶然に環境中の亜鉛を含む化学物質が脳においてMAOA(モノアミンオキシダーゼA)の活性を阻害し、正常な神経伝達系を乱す可能性があることを発見した。現代では食品添加物や環境災害による放出などにより、子ども達の脳が低濃度の亜鉛に長期暴露される可能性が考えられる。生体内での亜鉛過剰な状態がもたらす影響についての知見は少なく、慢性的に過剰な亜鉛に曝された思春期の子どもの脳がどのような影響を受けるかをマウスで検証した。 マウスを親の代よりZnCl2を0.01%含む飲料水で長期飼育し、産まれた子どもも0.01%ZnCl2水で飼育した。5から8週令で迅速に脳を取り出し、氷上にて視床下部・海馬・扁桃体に分け、直ちに液体窒素に保存した。さらに視床下部組織よりRNAを抽出してAgilent社のWhole Mouse Genome オリゴDNAマイクロアレイ(4x44K)v2により網羅的発現解析を行った。数値データを正規化した後、シグナル値を比較、Zscore>=2かつRatio>=1.5、および Zscore<=-2かつRatio<=0.66で発現の増減変化を示した遺伝子群を抽出し、DAVIDでパスウェイ解析を行った。その結果、 視床下部では、Calcium signaling pathway(p-value=2.0E-5)およびNeuroactive ligand-receptor interaction(p-value=7.4E-5)においていくつかの遺伝子の発現抑制が明らかになった。さらに、同様に飼育した8~9週齢マウスで行動解析を行ったところ、コントロール群に比べて亜鉛群では社会性や環境適応性、学習・記憶能の向上がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2回目のマイクロアレイ実験を行う予定であったが、マウスの飼育と行動解析実験に時間と手数がかかったため、若干遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、情動や学習に関与する海馬や扁桃体での遺伝子発現解析を行い、行動実験もサンプル数を増やす予定である。 さらに、ガスクロマトグラフ質量分析系を用いた代謝物変動解析の準備中である。行動、遺伝子、代謝物と統合的にデータを収集し、慢性的な過剰量の亜鉛摂取の影響を詳細に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの行動解析実験のため、週令のそろったものを集めるのに、繁殖および飼育に時間を要したため。 行動実験を終了したマウスを計画書の通り、処置し、摘出した脳の各部位をマイクロアレイ実験に供する。マイクロアレイの実験および解析に費用を要する。
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