研究課題/領域番号 |
25350940
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松嵜 洋子 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90331511)
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研究分担者 |
無藤 隆 白梅学園大学, 子ども学部, 教授 (40111562)
石沢 順子 相愛大学, 人間発達学部, 准教授 (40310445)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 総合的運動遊び / 幼児 / 身体の動き / 多様性 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、2つの研究に取り組んだ。 (1)平成25年度に実施した保育施設での総合的運動遊びの取組みに関する質問紙調査の結果を1年間の傾向を詳細に検討して報告書にまとめ、協力園等を対象に報告会を実施し、さらに学会で発表した。 総合的運動遊びには、氷鬼や色鬼のように年齢が高くなるにつれて増える遊びと、追いかけ鬼ごっこやかくれんぼのように年齢を問わず高い割合で実施されている遊びがあった。後者は同じ遊びであるが年齢によってルールや形態が変化していた。保育者が遊びの中で経験してほしいことは、年齢だけでなく時期によっても異なり、保育者は子どもの現状を把握してねらいを立て鬼遊びの種類や方法を選んでいた。 (2)鬼遊びに継続的に取組み、園全体の取組体制や課題意識をもつ9園(保育園6、幼稚園2、認証保育所1)を対象に総合的運動遊び場面の観察を行い、また保育者にインタビュー調査を実施した。事例を(1)の実態調査の「保育者が鬼遊びで経験してほしいこと」の分類項目である「身体」「判断力・思考力等」「人とのかかわり」の3つの視点から検討した。 その結果、園庭環境を見直し再構成した園では、子どもたちの園庭の使い方や、遊び方、動きに変化が生じたり、広がりが見られたりなど子どもの身体の動きが異なった。また同じ種類の総合的運動遊びでも年齢によって参加人数や保育者の関与の仕方、ルールの複雑さなどが異なり、年齢に応じたかかわりによって判断力や思考力の育ちが促されていること、さらに子どもたち自身が相手や集団の状況を理解して関わりを変えていることが明らかになった。これら3つの視点はつながり合っており、「子どもたちの「身体」の動きは「イメージする力、考える力」によって広がり、保育者や子ども同士という「人とのかかわり」の中でより豊かで確かなものになっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実態調査では当初40施設を対象とする予定であったが59園から春・秋・冬の3回全ての回答を得られ、総合的運動遊びの2~5歳児の1年間の取り組み現状と時期による違いを明らかにして学会発表や協力園対象の報告会を実施した。 また、場面観察や保育者へのヒアリング調査を実施して、年齢、時期による遊び方の違いや子ども同士の関わり、保育環境による遊び方の違いを見出し、幼児の発達を促すための総合的運動遊びの環境構成と指導方法を提唱する知見を得た。しかしながら、活動強度など動きの詳細な測定は実施することができなかった。 さらに保育現場向けに総合的運動遊びを含めた運動遊びリーフレット、および、HPを作成してこれまでの研究成果を公開した。これらの成果からおおむね順調に進展できたものととらえる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)横断的観察:2歳児から5歳児を対象に、総合的運動遊びの場面の横断的観察を行う。遊びの種類による身体の動きの違いの有無、相違がみられるときはその内容を検討する。また年齢による違いも検討する。遊びの中に含まれる身体の動きを保育場面により、a)種類と回数、b)活動量と活動強度、c)動きの種類の組み合わせ等の観点から、遊び中の身体の動きをビデオで記録し、データを収集する。さらに、保育者にインタビューを行い、総合的運動遊びのねらいや提供方法について補助資料を得る。 (2)縦断的観察:個々の幼児の行動特徴による身体の動きの違いの有無、幼児の活発さの違いの変化のついても時期を追って観察し、検討する。また、遊び中の動きは単独で生起するだけでなく、複数の動きが同時に起こる、あるいは、連続して起こるなど動きの組み合わせについても吟味する。 (3)研究成果の発表、発信:これまでの研究成果を学会に発表したり、論文を執筆する。園内研修等により成果の周知を図る。さらに現場保育者との意見交換をして、総合的運動遊びの指導方法の提言につながるような資料とするために精緻化する。また、平成26年度に作成したリーフレット、HPにより本研究の成果を保育現場や保育養成課程の学生等を対象に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
保育観察を継続的に実施することができなかったため、観察データの記録、分析、考察、成果発表に要する費用に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年5月より保育観察を実施する予定なので、その記録、分析、考察、成果発表に要する費用特に、研究協力者に依頼して観察や分析を行うための費用として使用する。また、学会や研究会等の研究発表や成果発表の参加や発表するための資料作成費用とする。さらに26年度に作成したリーフレットの送付費用として使用する。
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