研究課題/領域番号 |
25350941
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
前田 泰弘 和洋女子大学, 人文社会科学系, 准教授 (10337206)
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研究分担者 |
立元 真 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (50279965)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幼児 / 身体感覚 / 気になる子 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
本研究は保育所や幼稚園での保育において「落ち着きがない」、「衝動的に他児を叩く」など対応に苦慮されるいわゆる「発達が気になる幼児」について、①その特徴である身体感覚の偏りを保育者が客観的かつ簡便に評価できる方法を開発すること、②評価に基づいた身体感覚の偏りを改善するための保育を保育者自身が計画・実践できるよう、従来の保育の手法を再構成・体系化することが目的であった。具体的には幼児の気になる行動と身体感覚に着目し、保育所と幼稚園に在籍する保育者を対象として気になる行動と身体感覚の偏りの関連性を質問紙により調査し明らかにする。また、身体感覚の向上・改善を日常の保育で用いられる活動を用いて行えるよう、それらの活動を身体感覚の面から整理し発達に応じた活動指標として体系化することを目的としている。平成26年度は改善が望まれる気になる幼児の行動と身体感覚の偏りの関連性を調べた。その結果、身体感覚の偏りの大きさと気になる行動の発現には正の相関関係があることが分かった。また、身体の姿勢や動きを司ることの拙劣さは、前庭感覚や固有受容覚の未熟さとの関連性が高かったが、一方でそれらの身体感覚(体性感覚)は、聴覚や視覚など五感の偏りに強い影響を受けている可能性が示唆された。このことから、幼児の身体感覚の評価を考えるに当たっては、まず入力系である五感の状態を確認することが必要なこと、さらに体性感覚の向上を図る活動をする際、すなわち体性感覚の使用を保障する保育活動をする際には、五感の状態を確認したり、それに配慮する取り組みをすることが必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の成果を踏まえ、幼児の身体感覚を行動から客観的評価するための指標を開発するのが今年度の予定であった。保育士を対象にした幼児の気になる行動を調査した結果、気になる行動と身体感覚の関連性が明らかになりつつあったが、一方で予備的に行なった幼稚園教諭を対象にした調査では、幼児の発達の見方が若干異なる傾向があり、その確認のために複数回の調査を行なったことから指標の開発までには至っていない。そのため、その後に研究計画に予定されていた身体感覚評価表を用いた幼児の身体感覚の現状調査も実施できていないことから、達成度区分をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
幼稚園教諭を対象とした幼児の行動の評価については、論文執筆をもって目途が立ったため、これをもって幼児の気になる行動と身体感覚の関連性を体系化した調査紙を作成する。また、この妥当性を検討するための追調査を行なうことと並行して、身体感覚の向上(拙劣な身体感覚の使用)を促す、保育現場での活動についても収集・整理を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度作成予定の調査紙の作成が遅れ、予定していたこれを用いた調査が年度内に実施できなかった。また、地方の保育現場等への実地調査の機会が十分に取れなかったことなどが、次年度使用額が生じた主な理由と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
調査紙の作成に目途が立っているため、これを用いた調査計画をより短期に行なうよう修正し実施する。また、時間の関係上、調査を並行して進める予定である。さらに、生活・保育環境が幼児の身体感覚の向上に良い効果を与えることが示唆される保育現場への調査やその保育で導入されている身体感覚の改善に関する取り組みの調査を行い、最終年度の総括である、幼児の身体感覚の状態に整合した動きづくりの開発を進めていく。
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