研究課題/領域番号 |
25350948
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
小林 芳文 和光大学, 現代人間学部, 教授 (70106152)
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研究分担者 |
大橋 さつき 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (60313392)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災支援 / ムーブメント教育 / 遊び支援 / 遊び環境 / 室内遊び / 親子遊び / 地域支援 / 原発事故 |
研究概要 |
本研究においては、原発事故影響下にある地域の子どもの育成支援を目指した取り組みとして、ムーブメント法を活用した室内遊びのプログラムと支援者養成を目的に、3年間で(研究1)~(研究6)の6つの研究を実施する計画を提出した。 初年度である本年度(平成25年度)は当初の計画にそって、福島県内において原発事故の影響下にある子どもの現状と遊び「環境」に関する基礎調査を行い(研究1)、地域の施設を活かした室内遊びプログラムを提供し、参加者の意識調査を行いながら現地への適用を探り(研究2)、現地の支援者養成を目指した研修プログラムの実施(研究3)を継続して遂行した。(研究1)(研究2)(研究3)においては、当初の計画通り、平成25年度後半より、月1回のペースで室内遊びのプログラムと研修プログラムを実施しながら現地調査を重ねた。 さらに、前倒し請求により、以下の追加研究を実施した。 <追加研究①>(研究1)(研究2)を通して、同じく東日本大震災の被災地であるが原発事故の影響下にはない地域との比較の必要性を見出し、比較対象として宮城県石巻市における調査実践を追加した。その結果、11月と1月に、福島県郡山市と宮城県石巻市で同じ親子遊びのプログラムを実施し、実践の様子や参加者の意識調査などをもとに比較検討した。 <追加研究②(研究4)> 平成26年度(2年目)の計画であった1年目の成果報告と課題の整理(研究4)を前倒しで実施した。まず、本研究の概要を分かりやすく伝えるパンフレットを作成し、関係各所に配布し理解を深めながら実践調査を継続した。また、研究集会(平成25年12月22日、日本児童学会研究集会、富山大学)に参加し口頭発表を行った。平成26年3月2日には、郡山女子大学にて、中間報告として公開シンポジウムを実施し、関係者との意見交換を行い、課題を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(研究1)(研究2)(研究3)は順調に進み、次年度、(研究4)として引き続き取り組む予定の室内遊びのプログラムや研修プログラムの実施に関わる遊具、人、場所などの研究環境、ネットワークが、現段階で整っており、問題なく研究目的を達成できると考えられる。 また、前倒し請求により、次年度実施予定の研究成果の中間報告(研究4)まで完了した。活動の概要について中間的報告を行い、継続的展開に向けて、親や住民、現地スタッフを対象としたリーダー養成や既存の地域施設を活かしたプログラムに焦点を当てた議論がなされた。追加研究として取り入れた他の被災地における活動の比較からは、豊かな遊び環境をつくるためには、子どもたちに遊具やスペースを与え、物理的に「遊ばせる」環境を提供するだけでなく、その場を共有する保護者や施設スタッフが主体的に「共に遊ぶ大人」として魅力的な遊び環境になることの必須であることが確認された。そして、その環境づくりに、遊びを原点とする発達支援法であるムーブメント教育が有効であることをあらためて認識した。特に、実施した活動の記録からは、シンプルな形、色鮮やかなムーブメント遊具が、様々な人が参加する場でも対象に合わせて活用でき、参加者同士のかかわりを促し、自然なコミュニケーションの機会をつくり出していることが分かり、共に遊ぶ体験がコミュニティの形成につながると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
(研究4)として実施した公開シンポジウムにおいて、今後の課題として、いかに、日常の中に自然な形で遊びを取り入れ、無理なく継続できる環境をつくるかという視点が確認された。そのためには、単発の出張ムーブメント教室を数多く行うよりも、保護者や現地の支援者にムーブメントプログラムの体験と連動した研修を行い、遊び環境の担い手となる「大人」を育てることが最も重要であると考えた。よって、今後は、さらに、現地のニーズを把握しながら、親子ムーブメントプログラムの実施と研修プログラムとの連携を強化して取り組んでいきたい。 2年目(平成26年度)は、当初の計画にそって、福島県郡山市内の施設において、親子を対象とした室内遊びのプログラムを年間10回の計画で継続的に実施する(研究5)。(研究3)の研修に参加した現地の支援者(NPO法人によるプレイパークのスタッフ、保育士ら)や親がリーダーとして、活動を担うことができるよう活動前後の研修を続け、実践を繰り返す中で支援し、その効果を検討する。VTRの記録分析や参加者のコメント、リーダー・スタッフの意見交換をもとに、実施したプログラムや研修内容をふりかえり、現地へのさらなる適用に向けて改善点を探りたい。また、福島県内の現地調査を継続しながら、課題の把握に努めたい。 最終年度(3年目)となる平成27年度には、前年度の実践を分析し、その成果をまとめ、学会発表・論文発表、シンポジウム開催、パンフレットと映像資料(DVD)の作成等の形で報告(研究6)を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展から、前倒し請求により、次年度開催予定であった研究成果の中間報告(研究4)をとして、年度末に自主公開シンポジウムを実施したため。 公開シンポジウムの記録をまとめながら、引き続き、(研究5)として室内遊びのプログラムや研修プログラムを実施する。関わる遊具、人、場所などの研究環境、ネットワークが、現段階で既に整っており、問題なく研究目的を達成できると考えられる。
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