研究課題
本研究では、学校における健康相談活動を支援するシステム構築に必要となる基礎的事項を開発することを目的としている。本年度は昨年に引き続き、「学校教育環境における健康相談支援システムの開発」を目指して研究を行ってきた。具体的には「健康相談活動支援システムへの応用を目指したVisual Analog Scale(以下「VAS」)によるアプリケーションソフト(以下「VASアプリ」)の開発」を柱に、「健康相談支援システムへの応用を目指した生体信号処理」を関連させる形で研究活動を実施してきた。まず、携帯端末であるiPadで実行できるVASアプリについて試作品の開発に成功した。そこで、実際に運動部所属学生を対象とした評価実験を実施した。その結果、リッカートスケール質問紙(従来主観評価測定に広く用いられている)による方法と遜色なくVASアプリが利用可能であることが示唆される知見が得られた。そのため、回答者属性の広範化などを通じた評価実験を重ねることおよびユーザビリティの向上をはかることで、開発されたVASアプリを健康相談活動支援システムへ展開することが十分可能であると考えている。次に、画像や楽曲・音源といった視聴覚刺激が提示された場合の自律神経活動に与える影響を加速度脈波解析により実施し、この結果にVASによる主観評価測定(被験者が感じたリラックス度や提示された視聴覚刺激の印象等)を加えて、被験者の感覚と自律神経活動との挙動の相関について考察を重ねている。その結果、被験者の微妙な感情をこれら二つの指標の複合体として表現できる示唆が得られた。したがって、これらを健康相談活動支援システムへ応用することも十分可能であると考えている。
2: おおむね順調に進展している
「VASアプリの開発」で得られた知見について、全国大学保健管理集会で口頭発表している。さらに、その知見について研究代表者所属機関の紀要論文として公表している。また、「視聴覚刺激に対する主観評価と生体信号解析との相関」について得られた知見を査読付き原著論文2本(うち1本については2014年度の最優秀論文賞を受賞した)として公表している他、5件の学会口頭発表につなげている。関連して、招待講演1件を行っている。以上の成果について研究目的に照らしあわせ自己点検した結果、現在までの達成度についておおむね順調に進展していると評価する。
本年度の知見を応用し、VASアプリの更なる改良と評価実験を重ねることでVASアプリの健康相談活動支援システムツールとしての可能性をゆるぎないものにしていきたい。あわせて、VASとリッカートスケールについての理論的考察も行い、VASの有用性を示すような知見を得るべく研究を重ねていきたい。加えて、生体信号解析と主観評価測定の両者の結果を複合させた定量的表現による健康相談ツールを実現すべく、基礎的データの収集も重ねていきたいと考えている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
静岡産業大学情報学部研究紀要
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バイオメディカル・ファジイ・システム学会誌
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