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2013 年度 実施状況報告書

新奇グアニン修飾アンチセンス核酸を利用したRNA構造・機能制御法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25350958
研究種目

基盤研究(C)

研究機関弘前大学

研究代表者

萩原 正規  弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (40403000)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードアンチセンス核酸
研究概要

これまでに申請者は、RNA中への人為的なグアニン四重鎖構造の誘起を達成する、新奇アンチセンス核酸(グアニン修飾アンチセンス核酸:g-AS)を開発した。G-ASはアンチセンス領域がRNAと配列特異的な二本鎖形成をすると同時に、RNA中に存在する連続するグアニン塩基とともに、安定なRNA-DNAへテログアニン四重鎖構造を形成する。本年度はg-ASのRNAウイルス機能阻害への有用性を確認するために、HIV-1ウイルスのcentral polypurine tract(塩基配列 4581–4756)と呼ばれるプリン塩基が高頻度に出現する領域を標的としたアンチセンスを設計し、逆転写酵素阻害試験により評価した。
これまでに、HIV-1による後天性免疫不全症候群(AIDS)発症に重要な役割を果たしているnefタンパク質をコードする領域を標的としたg-AS設計を行い、逆転写酵素による複製阻害活性を達成した。今回、HIVゲノム中に高頻度にプリン塩基が認められる領域であるcentral polypurine tract領域においても、HIV-1ゲノムとの相補鎖形成だけを利用した16塩基長のアンチセンス核酸(AS-1)と比較して、グアニン塩基を導入した修飾アンチセンス核酸(g-AS1)では、DNAへの逆転写反応を効率よく阻害することが分かった。逆転写反応の伸長停止産物の大部分は、mRNAに存在するグアニン連続配列の3’側で認められたこと、さらに円二色性スペクトル解析、融解温度測定からグアニン四重鎖構造形成を示唆する特徴的なスペクトル変化が認められたことから、g-AS1内のグアニン領域とRNA配列中のグアニン領域が安定なRNA-DNAへテロ四重鎖構造を形成していることが分かった。本結果から、ゲノム配列中の様々な領域を標的としてグアニン修飾アンチセンス核酸を設計出来ることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アンチセンス核酸は標的遺伝子のmRNA、あるいはRNAウイルスなどの塩基配列が既知であれば、原理的には論理的な分子設計が可能になる点で非常に有用であり、細胞の機能解析、機能制御を行う上でアンチセンス核酸は非常に有用な候補分子であると考えられる。ゲノム配列解析は、解析装置の能力の劇的な向上に伴い大きく進展したことから、ゲノムを標的とすることで効率的な創薬が可能になると期待される。RNAをゲノムとして有するウイルスは容易に遺伝子配列を変化させ、その結果生産されるタンパク質はアミノ酸変異にともない、これまで有効であった薬剤に対する感受性を変化させることで生き延びる。
本研究により開発したアンチセンス核酸分子は遺伝子配列を標的とするため、塩基配列を容易に刻々と変化させ薬剤感受性を変化させたウイルスにおいても容易に対応できるものと考えた。実際、本年度の研究結果から様々なゲノム領域を標的とした分子設計が容易に行えることを明らかにすることが出来たことから、本研究により開発した新奇アンチセンス核酸は、特別な化学修飾を必要とせずに、ユニークな四重鎖構造をRNA中に誘起することが出来る新たなアンチセンスの化学修飾方法として応用が期待できると考えられる。新たなゲノム領域を標的とした本年度のアンチセンス分子設計の成功により本アンチセンス核酸分子の有効性を示すことが出来たことから本年度の研究結果は、想定した目標をおおむね達成できたものと考えている。

今後の研究の推進方策

本年度は逆転写酵素阻害に伴うウイルス遺伝子複製阻害に注目して研究を展開し、一定の成果を上げることが出来た。来年度以降は、アンチセンス核酸分子の構造修飾(標的配列に対してさらに安定なグアニン四重鎖構造を形成する配列の探索等)へと展開していきたい。さらには、遺伝子翻訳過程の制御へも展開したいと考えている。具体的には、最近申請者が見いだしたRNAの高次構造体の一つであるRNAタンデム型四重鎖構造を誘起するアンチセンス核酸の新奇構造修飾方法の開発を推進する。タンデム型四重鎖構造は熱安定性が非常に高く、この構造を人為的に操作できればRNAの機能を人為的に制御することが可能になると考えている。この目的達成に向けて、(1)修飾アンチセンスの構造修飾法の検討、(2)RNA機能阻害能(特に翻訳過程)の実証、を計画している。ゲノム配列解析は、解析装置の能力の劇的な向上に伴い、タンパク質構造、機能解析技術に比べて大きく進展したことから、ゲノムを標的とすることで効率的な創薬につながるものと期待される。

次年度の研究費の使用計画

本年度、アンチセンス核酸分子のスクリーニングのために多種類の核酸合成が必要と見積もり予算を計上した。しかしながら、スクリーニングが予定以下の費用で済んだため、次年度へと繰り越しをすることになった。
申請者が所属する研究施設では、核酸の熱安定性を評価する分析機器がない。そのため他大学において設備を使用させてもらっていたが、測定頻度が高まって来たため自前の機器を購入する必要性が出て来た。本年度の研究予算で、核酸の熱安定性を評価する紫外可視吸光測定システムを導入したいと計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Formation of Ligand-Assisted Complex of Two RNA Hairpin Loops2014

    • 著者名/発表者名
      Changfeng Hong, Takahiro Otabe, Saki Matsumoto, Chikara Dohno, Asako Murata, Masaki Hagihara, and Kazuhiko Nakatani
    • 雑誌名

      Chemistry European Journal

      巻: 20 ページ: 5282-5287

    • DOI

      10.1002/chem.201304683

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Synthetic Riboswitch that Operates Using a Rationally Designed Ligand-RNA Pair2013

    • 著者名/発表者名
      Chikara Dohno, Izumi Kohyama, Maki Kimura, Masaki Hagihara, and Kazuhiko Nakatani
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 52 ページ: 9976-9979

    • DOI

      10.1002/anie.201303370.

    • 査読あり
  • [学会発表] グアニン四重鎖形成を利用したペルオキシダーゼタグの開発2014

    • 著者名/発表者名
      三津谷 佳大・萩原 正規
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会(2014)
    • 発表場所
      名古屋大学 東山キャンパス
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [図書] Methods in Molecular Biology2014

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hagihara
    • 総ページ数
      315
    • 出版者
      Springer

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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