1.構造多様性の高い天然由来化合物ライブラリーの創出 昨年度に引き続き,「多様性拡大抽出物」を用いて,構造多様性の高い天然化合物様ライブラリーの創出をおこなった.ビアリール型化合物は,いずれも医薬品の構造によくみられるdrug-likeな化学構造であり,生物活性を示しやすい化合物群であるといえる.そこで,多様性拡大抽出物を利用したこのような化合物群から成る化合物ライブラリーの創製を行うこととした.原料としては多種類の芳香族化合物を含むことが知られているヨロイグサを用い,その抽出物に対して臭素化剤を作用させることで,それに含まれる化合物の芳香環を臭素化した.つづいて,アリールボロン酸との鈴木-宮浦カップリングを行うことでビフェニル結合が形成された多様性拡大抽出物を得た.これを分離・精製することで,5種類のビフェニル型化合物を得た.これらはいずれも,天然化合物としても合成化合物としてもほとんど報告されていない分子骨格を有していた. 2.得られた天然由来化合物ライブラリーを用いた自然免疫制御物質の探索 研究期間全体を通して得られた構造多様性の高い天然化合物様ライブラリーについて,自然免疫に関わる生物活性のスクリーニングをおこなった.スクリーニング法としては,以前我々が独自に開発したショウジョウバエ幼虫を用いたアッセイ系を用いた.その結果,ガジュツより得られた新規セスキテルペン類に自然免疫抑制作用を見出した.また,ビアリール型化合物2種が,ヘルパーT細胞のサイトカイン産生に関わるNFATの核内移行抑制作用を示した.以上の結果から,本研究で提唱している多様性拡大抽出物を用いる手法は,新規骨格・新規環構造を有し,かつ生物活性を有する化合物群を得るための手段として有用であることが明らかとなった.
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