研究課題
基盤研究(C)
アルツハイマー型認知症の患者様に処方されるアセチルコリンエステラーゼ阻害活性を示す天然物として,リコポジウムアルカロイド類や,最近薬として上市されたガランタミンが知られている.申請者は報告されているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と生物活性と全合成が報告されていないユズリミン類の構造が非常に類似していることに着目した.そこで,非常に複雑な縮環構造を有し,多くの類縁体が存在するユズリミン類を網羅的に合成できる手法を開発し,ユズリミンライブラリーを構築することを計画した.構築したライブラリーについてアセチルコリンエステラーゼ阻害活性試験を行い,ユズリミン類のアルツハイマー型認知症の処方薬としてのポテンシャルを評価し,これまで生物活性が報告されてこなかった天然物について新たな機能を開拓することも目的とした.平成25年度は,当初提案の計画のようにユズリミン類の基本骨格法の開発を検討した.その結果,予期せぬ7員環形成反応を見いだすことができ,ユズリミン類のD環部分を構築することができた.この反応はこれまで例はなく,大変興味深い.この化合物から誘導したラジカル環化反応前駆体と塩化サマリウムを反応させたところ,分子内ラジカル環化反応が進行し,ユズリミン類の全炭素環に対応するA-D環を構築することができた.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画ではユズリミン類の全炭素環であるA-D環をドミノ環化反応によって一挙に構築することを計画していたが,思いがけず分子間のアルキル化,続く分子内Wittig反応が円滑に進行し,構築困難な7員環を簡便に構築することができた.得られた化合物に対してA環を導入することは容易であるため,非常に有用な反応を見い出したと言える.この化合物に対し,塩化サマリウムを用いた分子内ラジカル環化反応を作用させることにより,計画通り今年度中にユズリミン類の全炭素環に対応するA-D環の構築法確立できた.今後,見い出した反応の一般性について検討する予定である.
ユズリミン類の全炭素環についての構築法を確立できたので,今後はユズリミン類の複素環部分の合成に着手する.具体的には分子内光延反応により窒素を含む9員環を構築し,この1種類の前駆体から,3種類に分類されるユズリミン類(ヘミアミナールタイプ,イミンタイプ,アミンタイプ)を分子内渡環反応を鍵反応として網羅的に合成できる方法論を確立する.また,合成したモデル化合物についてもアセチルコリンエステラーゼ阻害活性を実施する.
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