研究課題/領域番号 |
25350960
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
早川 一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20375413)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 天然物化学 / 有機合成化学 / 構造活性相関 / ユズリミン類 / アセチルコリンエステラーゼ阻害活性 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症の患者様に処方されるアセチルコリンエステラーゼ阻害活性を示す天然物として,リコポジウムアルカロイド類や,最近薬として上市されたガランタミンが知られている.申請者は報告されているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と,生物活性と全合成が報告されていないユズリミン類の構造が非常に類似していることに着目した.そこで,非常に複雑な縮環構造を有し,多くの類縁体が存在するユズリミン類を網羅的に合成できる手法を開発し,ユズリミンライブラリーを構築する事を計画した. 昨年度までに,ユズリミン類に共通する全炭素骨格部分であるA-D環部分の構築法を確立した.平成26年度は引き続き全合成を目指し,1つの合成中間体から複素環部分が異なるさまざまなユズリミン類を合成できる,網羅的合成法の確立を検討した.すなわち,適切な位置に官能基を配置した環化前駆体を設計・合成し,この前駆体に対してStaudinger反応と続く分子内SN2反応を行ったところ,予想に反し,Bledt則に反する6-6-5員環が縮環した三環性イミニウム化合物が生成した.この三環性イミニウム化合物はユズリミン類の複素環部分であるAEF環部に対応し,水和すればヘミアミナール型,還元すればアミン型など,さまざまなユズリミン類に変換することができる中間体である.このようなBledt則に反する化合物が得られたことは大変興味深い.しかしながら,詳細に構造を解析した結果,この化合物の20位メチル基の立体化学は非天然型であった.来年度は20位メチル基の立体選択的導入と三環性イミニウム化合物のX線結晶構造解析を実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,ユズリミン類の複素環部分をドミノ環化反応によって構築することを計画していた.しかし,予想に反して環化前駆体を合成する時点で一部の環化反応が自発的に進行した(当初,この時点では別の化合物が生成したと考えていた).これは官能基の配置が適切であったためであると考えられる.この化合物を塩基処理することによって2つ目の環化反応が進行したが,生成した化合物の詳細な構造解析を行ったところ,Bledt則に反する三環性イミニウム化合物であった.ユズリミン類の中でもBledt則に反する天然物は存在するが,合成によって得られたことは大変興味深い.また,この化合物は様々なユズリミン類へ変換できる可能性がある中間体である.以上のことから,本課題はおおむね順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた三環性イミニウム化合物は,20位のメチル基の立体化学は非天然型であった.そこでこの部分の構築を不斉ヒドロホウ素化反応によって立体選択性の逆転を検討する.また得られた三環性イミニウム化合物は通常は存在しない,Bledt則に反する構造である.その構造をより確実に決定するためにX線結晶構造解析を行う.Bledt則に反する構造が存在することは,有機化学的に大変興味深い.さらにこの三環性イミニウム化合物から,ユズリミン類のさまざまな複素環部分に対応する,アミナール型,アミン型,N-オキシド型への変換を検討する.
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