研究課題
基盤研究(C)
マクロライド系抗生物質は、多様な構造と抗がんなど活性から、重要な抗生物質グループである。その代表格であるエリスロマイシンは感染症治療に用いられているが、不斉中心が多く化学合成が難しいため、微生物発酵で生産されている。このマクロライド系抗生物質は二次代謝産に属する遺伝子群で生産されるため、生産制御が難しく、安定的に高生産する株を得るのは難しい。よって、このマクロライド系の抗生物質の生産制御は、発酵産業上重要な課題であり、微生物育種によって安定した変異株を作り、効率の良い生産方法の確立が求められている。そこで、さまざまな環境の土壌から放線菌の単離を行い、抗菌活性スクリーニングを行って、活性を示す株を得た。特に、Streptomyces sp.MK-19株において抽出物から抗酵母活性が見られたので、抗酵母物質の単離と構造決定を行った。そこで、MK-19株の16S rDNAの配列の解析を行ったところ、MK-30株と相同性が99%であることを明らかにした。寒天培養菌体をアセトン抽出し、抽出液を減圧濃縮後、逆相オープンカラムを用いた含水メタノールによって溶媒分画した。活性の見られた100 %メタノール溶出画分からODSカラムを用いたHPLC分取によって新規抗酵母物質を単離した。本物質はポジティブイオンモードのHR-ESI-MS測定でm/z 611.39にイオンピークを与えた。組成式はC35H56NaO7と推定され、Naイオン付加のイオンピークであることが示唆された。よって分子式C35H56O7で分子量588 Daであることが示唆された。さらに化学構造を決定するために、重アセトン中での各種NMRスペクトラムの測定を行い、構造決定を試みた。COSY、TOCSY、HMBC、HMQCの二次元NMRスペクトラムの測定の結果、新規bafilomycin類縁体であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
現在までにスクリーニングで、新規マクロライドmakinolide Bを得ることができた。NMRによって化学構造を決定することができた。さらに活性試験を行い、抗カビ活性を見出した。本研究の内容はすでに論文としてまとめ、公表済であることから、著しく進展したと判断できる。
これまでの問題点は、含量が少なく、単離の難しいマクロライド系の物質を育種を用いて生産量を上げることが難しい点にあった。この問題点に関して、現在、各種の薬剤耐性を利用して変異株を作成中であり、今後その生産量の増加が見込まれる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 77 ページ: 1964-1966
10.1271/bbb.130204