研究課題/領域番号 |
25350966
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
倉本 誠 愛媛大学, 総合科学研究支援センター, 准教授 (50291505)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 天然物化学 / 構造解析 / アルカロイド / 海綿動物 |
研究概要 |
本研究では、愛媛県周辺の海域を中心として新しい構造と活性を有する生体機能分子の発見を第一の目的として研究を実施した。平成25年5月に愛媛県佐田岬において新たに生物採集を実施した。この採集においては、西宇和郡伊方町三崎漁業協同組合および漁家の協力を得て、水深200mよりAxinella sp., Juspis sp., Ircinia sp.そのほか未同定のカイメン動物2種を各10kgずつ採集することができた。 このカイメン動物をメチルアルコールを用いて抽出することで、海綿動物に含まれる成分を抽出している。得られた抽出液について、申請書に記載したようにしたように呈色剤に対する反応と分光機器における特徴的なシグナルを指標として分離を進めた。ヘキサン-メチルアルコールを用いた脱脂操作、抽出液のpH変化を利用したアルカロイド抽出、高速液体クロマトグラフィーを用いた分離を進めた。 これまでに新規な構造を有するジブロモファケリン類縁体、シリンドロジン類縁体を単離することができた。さらに新たな多環性のピロールーイミダゾール型アルカロイドを単離することができた。これら構造の解析は核磁気共鳴装置、質量分析装置の解析を中心に実施した。また、今回得られた物質の多くが、分離の最終段階でTFAを使用したことから、塩の状態で単離された。さらに、相対立体化学はNOE(核オーバーハウザー効果)およびROESYスペクトルの解析により推定することができた。また、絶対立体化学の解明においては、ヘテロ環構造に由来する発色団に注目してCDスペクトルの解析を実施することで解析を起こっている。リンパ性白血病細胞に対する細胞毒性を確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、予備実験開始時に存在を確認していた含窒素化合物だけでなく、さらに微量に含まれる含窒素化合物をAxinella sp.より分離し、立体化学を含めた構造を明らかとすることができた。 さらに、平成25年度に分離を進めた海洋生物のみでなく、他の海綿動物の抽出液も作成することで、次年度に探索研究を継続するための抽出液を作成することができた。これらの結果を合わせて、まず第一の目標は十分に達成できていると考えられる。 活性試験においては、抗菌活性試験は実施したが、期待していた活性は見いだされなかった。しかしながら、白血病細胞系に対する弱い効果が見いだされた。活性試験法については今後の課題としてさらなる試験を試みていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はAxinella sp.を中心に分析をすすめ複数の化合物の単離と構造解析を達成した。今回の海綿動物には、さらなる多環性のアルカロイド化合物の存在が確認できている。今後はまず微量成分の分離と構造解析を実施する。さらに、他のカイメン動物のアルコール抽出液を作成しており、分析を展開していく。 昨年度、ガラス容器を組み合わせることで、大量濃縮装置を作成したことから、高温にならずに安定に濃縮が可能となった。本装置を用いることで短時間での濃縮を展開していく。海洋生物の採集については、春期にまず採集を実施する。昨年度の現地聞き取り調査において秋季には、春季と異なる海域で漁が行われることがわかった。これまでとは異なる生物種が発見できることが期待できることから、実験を展開する。 生物活性試験においては、これまでは他の研究グループの協力を仰いでいた。抗菌活性試験のみ自ら実施していたが、細胞毒性試験について実験準備を行っており、次年度以降実施したいと考えている。
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