研究課題
病原性環境菌の病原性の発現にはバイオフィルムの寄与が示唆される。即ち、バイオフィルムが関与する感染源・宿主細胞への侵入プロセスや、バイオフィルムに起因する消毒剤・抗生剤に対する抵抗性が病原性を下支えしている。本研究では、未解明な点の多い非結核性抗酸菌のバイオフィルム形成機構を明らかにするため、Mycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH)を対象にバイオフィルム形成因子やクオラムセンシングの研究を行う。まず、バイオフィルムの形成を促進する環境因子を検討した。その結果、気液界面に形成されるバイオフィルム(菌膜)形成には低酸素および富栄養条件が必要である事が判明した。このとき、細胞壁を構成する糖脂質であるtrehalose dimycolate (TDM)や trehalose monomycolate (TMM)が減少する。またglycopeptidolipid (GPL)が菌膜を肥厚化する事を明らかにした(投稿中)。一旦バイオフィルムを形成すると、一般的に用いられる塩素系消毒剤では完全な殺菌が困難である事を報告した(環境感染誌2015. 30, 243)。非結核性抗酸菌は水道管や住環境水系でバイオフィルムを形成して長期生息している。この中には栄養状態が低い環境も含まれている。そこで低栄養状態におけるMAHのバイオフィルム形成について検討した。その結果、一部の菌体が細胞融解を起こして細胞内成分を放出して栄養源として供給し、残りの菌の分裂を促進している事が判明した。このことから低栄養条件では、細胞間情報伝達物質の寄与は低いことが予想される。バイオフィルム形成には、酸素濃度の低下を感知してバイオフィルム形成遺伝子の発現が促進されると推察されたので、今後検討を進める予定である。
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Plos One
巻: 10 ページ: e0141658
10.1371