研究課題/領域番号 |
25350969
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
高山 優子 帝京大学, 理工学部, 講師 (90461467)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒストン / 分裂酵母 / zinc finger |
研究実績の概要 |
ヒストン転写因子Ams2のZinc finger変異型は、タンパク質分解抵抗性とCENP-A機能阻害というユニークな特徴を示すことを見いだした。昨年までに、タンパク質分解抵抗性の原因を特定できた。本年度は、引き続きCENP-A機能阻害を起こすメカニズムについて解析を行った。 1、Ams2-Zinc finger変異型タンパク質のヒストンプロモーター領域の結合活性について Ams2-Z変異型タンパク質のヒストンプロモーター結合の有無をクロマチン免疫沈降(ChIP)法で、ヒストン転写量をRT-PCRで確認した。野生型Ams2はプロモーターに結合してヒストン転写量を増大させるが、変異型は結合できず、ヒストン転写も活性化できないことが明らかとなった。 2、Ams2-Z変異の過剰発現によるヒストン転写量の減少について Ams2-Z過剰変異によりヒストン転写量が減少する原因を解析したところ、Ams2-Zが野生型Ams2のプロモーター結合を阻害することがわかった。 3、Ams2同士の相互作用について Yeast two hybrid解析法を用い、Ams2同士の結合に必要な領域の同定を試みた。Ams2のN-末端側欠失で相互作用が見られなくなったため、Ams2はN-末端領域どうしで相互作用していることがわかった。 4、これまでの結果をまとめ、論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1、Ams2-Z変異型タンパク質のヒストンプロモーター領域の結合活性について Ams2-Z変異型タンパク質のプロモーター結合の有無をChIP法で、ヒストン転写量をRT-PCRで確認した。野生型Ams2はプロモーターに結合しヒストン転写量を増大させるが、Ams2-Z変異型では結合できず、ヒストン転写も活性化できないことがわかった。 2、Ams2-Z変異の過剰発現による、ヒストン転写量の減少について Ams2-Z過剰変異によりヒストン転写量が減少する原因には、①Ams2-Zがヒストン転写を阻害している ②ヒストンmRNAの安定性を低下させている の可能性が考えられた。はじめに、Ams2-Z過剰発現株において、Ams2-Zと染色体上のAms2がヒストンプロモーター結合の有無をChIP法により確認した。Ams2-Zの過剰発現により、染色体由来Ams2がヒストンプロモーターに結合できないことがわかった。この結果は、Ams2-Z変異型タンパク質はヒストンプロモーターへの結合を阻害していることを示している。 3、Ams2同士の相互作用について 計画段階では、Ams2相互作用を生化学的に解析することにしていたが、大腸菌発現系による組換えタンパク質精製ができなかった。そのため、、Yeast Two Hybridによる解析に切り替えた。N-およびC-末端側から断片化させたAms2と、全長型Ams2が相互作用を示すか確認したところ、N-末端側の欠失で相互作用が見られなくなった。このため、Ams2はN-末端領域どうしで相互作用していることがわかった。 4、これまでの結果をまとめ、Ams2によるヒストン転写活性化の分子機構のモデルを更新した。研究計画書では論文投稿を済ませる予定であったが、データのブラッシュアップ等に時間を要し、現在投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は論文投稿を行い、雑誌への掲載を完了させる。 1.Ams2の自己複合体形成について 自己複合体形成を詳細に検討するために、本年度達成できなかった組換えタンパク質による生化学実験を行う予定である。大腸菌発現系ではなく、再構成型無細胞タンパク質合成系(PUREfrex)を試みる。使用する鋳型DNAをPCRにより作成し、そのDNA断片をPUREfrexに導入してタンパク質を得る。タンパク質精製を簡便に行うために、His-tagもしくはFlag-tagを導入した組換えタンパク質を合成する。全長型Ams2は、精製時すでに複合体を形成している可能性があるため、精製タンパク質をゲル濾過カラムにより分離し、分子量の推定を行うことで何量体を形成しているのかを明らかにする。また、N-末欠失型Ams2タンパク質が複合体形成せず、単体で分離することも確認する。 2.精製Ams2タンパク質によるヒストンプロモーター結合の解析 精製Ams2タンパク質が得られたならば、ヒストンプロモーター配列を用いたゲルシフト解析を行い、結合を左右する塩基の同定を試みる。Ams2はGATA-like配列に結合することがこれまでの実験から示唆されていることから、その配列に変異を入れたDNA配列にAms2が結合するかどうか確認する。Ams2の結合がみられなくなった変異部位を明らかにすることで、Ams2認識配列を同定する。また、この配列がヒストンプロモーター以外にも存在するかを、ゲノムデーターベースより検索し、他のAms2結合領域を同定する。 3.論文投稿に向けて図の作成や本文執筆を進め、英文校正後速やかに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品で計上していたReal-Time PCR試薬やディスポーザブル用品についてはキャンペーン時にまとめて購入したために、予定額を下回った。また、論文投稿にかかる経費を計上していたが、本年度中に投稿することができなかったので、その分が未使用である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費使用計画は、組換えタンパク発現・精製のための培地・カラムや発現誘導物質、in vitroタンパク質合成系キットを購入予定である。論文投稿を目指すため、英文校正費や論文投稿料などが必要となる。また、本研究の進捗状況を発表して幅広い分野の方々からご助言をいただくため、学会参加に伴う旅費も必要となる。
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