本年度は、本研究課題で開発した蛍光タンパク質を基盤としたATPセンサーを植物細胞と線虫個体に導入し、それぞれにおけるATPの動態を可視化した。植物細胞においては、コドンを植物化しシロイヌナズナのプロトプラストに導入したところ、動物細胞と同様に発現を検出できた。そして、ミトコンドリアにおけるATP産生をオリゴマイシンで阻害したところ、蛍光輝度の低下が観察され、植物細胞内でもATP産生が阻害されている様子を可視化できた。さらに458nmのレーザーで光刺激したところ、蛍光輝度の上昇が検出され、光合成によるATP産生も可視化することができた。次に線虫にmyo-2プロモーター制御で、このATPセンサーを咽頭筋に発現させ、ATP動態を検討した。麻酔薬である1-phenoxy-2propanolにより蛍光輝度の低下が検出され、予想どおりATP産生が阻害されていることを可視化できた。本年度の研究により、大腸菌や哺乳類の細胞だけでなく、植物細胞や線虫個体でも、開発したセンサーが使用できることがわかった。緑色のATPセンサーによる可視化解析に成功したため、複数の分子の同時観察に適用できるマルチカラーセンサーの開発も試みた。赤色のATPセンサーはmApple、青色のセンサーはBFPを基盤として作製した。緑色のセンサーを開発したのと同様、枯草菌のATP合成酵素のεサブユニットのATP結合領域を用いることにした。さらに蛍光タンパク質への挿入部位もほぼ同じ領域に挿入し、リンカー長調整、アミノ酸置換を繰り返し、ATPの添加すると蛍光強度が増加する赤色と青色のセンサーの開発に成功した。
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