研究課題
基盤研究(C)
我々は最近、ミトコンドリアタンパク質由来の好中球を活性化する3種類の新しい生理活性ペプチド、マイトクリプタイド-1、マイトクリプタイド-2およびマイトクリプタイド-CYCを生体組織より単離・精製することで同定した。さらに、ミトコンドリアタンパク質配列の中に、未同定の新規好中球活性化ペプチドが多数存在していることも見出した。そこで本研究は、さらに新規クリプタイドを同定すること、それらの情報伝達機構および生理的存在意義と病態との関わりを解明することを目的としている。1)新規クリプタイドの探索:本年度は、すでに我々が見出している好中球活性化ペプチドが持つ物理化学的性質、すなわち、細胞膜との相互作用により両親媒性へリックス構造を形成し、その親水面に正味の電荷を+2以上を持ち疎水面に芳香族ならびに脂肪族側鎖を持つペプチドをミトコンドリアタンパク質配列から探索し、新たに10種の新規好中球活性化ペプチド配列を同定した。2)マイトクリプタイド情報伝達機構の解析:まずマイトクリプタイドとそれらの受容体との相互作用の構造的特徴を明らかにするため、マイトクリプタイドによる好中球活性化におけるペプチド構造と活性との相関を検討した。その結果、マイトクリプタイド-2において活性化における最小ペプチド構造単位および最大内活性を示すペプチド配列を明らかにするとともに、マイトクリプタイドの活性を拮抗的に阻害する複数の化合物開発に成功した。3)マイトクリプタイドの生理的機能の解析:マイトクリプタイドの生理的機能を解析するため、既に単離・同定しているマイトクリプタイドに対するモノクローナル抗体の作製を試みた。その結果、エピトープの異なる複数のマイトクリプタイド-1およびマイトクリプタイド-2に対する特異的モノクローナル抗体の取得に成功するとともに、マイトクリプタイド-1に対する特異的中和抗体の取得にも成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
我々は最近、ミトコンドリアタンパク質に隠された好中球を活性化する3種類の新しい生理活性ペプチド、マイトクリプタイド-1、マイトクリプタイド-2およびマイトクリプタイド-CYCを同定した。さらに世界に先駆けて、ミトコンドリアタンパク質配列の中に、好中球活性化能を持つペプチド配列が存在していることを示唆し、このような元のタンパク質と全く異なった生体機能を持つ断片ペプチドを総称してクリプタイドと命名している。このような研究背景を踏まえ本研究は、さらに新規クリプタイドを同定すること、それらの情報伝達機構および生理的存在意義と病態との関わりを解明することを目的としているが、本年度は好中球活性化マイトクリプタイド10種類を新たに同定した。また、マイトクリプタイドによる情報伝達機構の解析研究においては、マイトクリプタイドとそれらの受容体との相互作用の構造的特徴を明らかにするため、マイトクリプタイドによる好中球活性化におけるペプチド構造と活性との相関を検討し、マイトクリプタイドによる好中球活性化における最小ペプチド構造単位および最大内活性を示すペプチド構造を明らかにすることができた。さらにマイトクリプタイドの生理的機能を明らかにするため、それらに対する特異的モノクローナル抗体の調製を試み、複数種のマイトクリプタイドに対して特異的に認識する抗体の取得に成功し、概ね予定通りに研究が進捗した。しかし本年度、これら研究成果に加え構造活性相関の検討により、複数のマイトクリプタイドに対する特異的拮抗阻害ペプチドのデザイン・合成に成功、さらにマイトクリプタイド-1に対する特異的中和抗体の取得にも成功し、マイトクリプタイドの生理機能を解析する上で非常に有用な武器を得ることができたが、これらは予想を超える研究成果であった。
本研究は、我々が発見したミトコンドリアタンパク質に隠された好中球活性化クリプタイド、マイトクリプタイドの情報伝達機構および生理的存在意義と病態との関わりを解明すること、またさらに新規クリプタイドを探索・同定することを目的としているが、本年度は好中球活性化マイトクリプタイド10種類を新たに同定した。今後もさらに新規クリプタイドの探索を行う予定である。また本年度、マイトクリプタイドによる好中球活性化におけるペプチド構造と活性との相関の検討により、マイトクリプタイドによる好中球活性化における最小ペプチド構造単位および最大内活性を示すペプチド構造を明らかにすることができた。今後はマイトクリプタイド受容体同定を効率的に行うことのできるプローブペプチドを、これら構造をもとにデザイン・合成し、マイトクリプタイドの受容体同定を、これらと受容体とを架橋することで検討してゆく予定である。また「11. 現在までの達成度」の項でも記述したように、本年度構造活性相関を検討により、複数のマイトクリプタイドに対する特異的拮抗阻害ペプチドのデザイン・合成に成功している。今後は、より拮抗阻害活性の強く、酵素耐性のある拮抗阻害ペプチドをデザイン・合成してゆく予定である。さらに今後は、すでに取得しているマイトクリプタイドに対する特異的モノクローナル抗体を用いて、実験動物におけるそれらの分子形態、生合成、分布および産生を検討するとともに、得られている中和抗体や拮抗阻害ペプチドによる生物活性阻害作用を用いて、マイトクリプタイドの生理機能および病態との関わりを解析してゆく予定である。加えて、未だ特異的抗体を取得していない様々なマイトクリプタイドに対する特異的モノクローナル抗体の調製も試みる予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
バイオサイエンスとインダストリー
巻: 71 ページ: 18-22
Bioorg. Med. Chem. Lett.
巻: 23 ページ: 1326-1329
org/10.1016/j.bmcl.2012.12.082
Peptide Science
巻: 2012 ページ: 277-278
Bioorg. Med. Chem.
巻: 21 ページ: 6323-6327
org/10.1016/j.bmc.2013.08.062
Peptides: Across the Pacific
巻: 2013 ページ: 314-315
http://b-lab.nagahama-i-bio.ac.jp/~h_mukai/
http://www.nagahama-i-bio.ac.jp/guide/kyoin/detail/post-5.html