研究課題/領域番号 |
25350972
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
野崎 浩 岡山理科大学, 理学部, 教授 (60159085)
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研究分担者 |
川出 洋 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20291916)
林 謙一郎 岡山理科大学, 理学部, 教授 (30289136)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モミラクトン / 生体防御 / ハイゴケ / 蘚類 / ファイトアレキシン |
研究実績の概要 |
下等な陸上植物である蘚類ハイゴケは,モミラクトンをアレロケミカル(自己防御に関与する2次代謝産物)として,自己防御に利用する。このモミラクトンはイネのファイトアレキシンであり,進化上かけ離れた植物種が,生体防御に同一化合物を利用する例はこれまでに報告がない。ハイゴケのモミラクトン生合成経路とその調節機構を解明することで,陸上植物における生体防御機構の進化を明らかにすることを目的とし,研究を推進してきた。25年度までに次世代シークエンサーの解析などに基づいて,ハイゴケからモミラクトンの生合成中間体であるピマラジエン合成酵素や酸化酵素の遺伝子クローニングを完了し,蘚類でのファイトアレキシン生合成酵素遺伝子を初めて同定した。26年度は,このモミラクトン合成酵素遺伝子の発現誘導条件やエリシター反応性を検討し,さらにTAIL-PCRにより,25年度に同定したピマラジエン合成酵素遺伝子のプロモーター領域をクローニングすることができた。また,合成酵素のストレス・エリシター応答性の解析を行い,蘚類のファイトアレキシン生産誘導による自己防御機構の進化について知見を得た。さらに,モミラクトン生合成酵素遺伝子のプロモーター部位を導入したレポーター遺伝子を形質転換し,その発現解析を試みた。これらの成果に加えてハイゴケから新たにカウレン合成酵素と推定される新たなジテルペン環化酵素遺伝子のクローニングに成功し,機能解析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度までに,第一目標であったモミラクトンの生合成中間体であるピマラジエン合成酵素遺伝子や、その下流の酸化酵素のクローニングを完了し,酵素の機能解析をほぼ終了することができた。次世代シークエンサーの解析に,やや時間がかかったが,得られた情報は研究の進展に非常に有効であり,酸化酵素遺伝子のクローニングに必須な情報を得ることができた。さらに,第二目標であった様々なストレス条件・障害条件下でのモミラクトン生合成酵素遺伝子の発現誘導条件やエリシターに対する応答性を検討することで,蘚類のファイトアレキシン生産誘導による自己防御機構の進化について一定の知見を得ることができたことも本研究における大きな進展である。さらに,新たなジテルペン環化酵素遺伝子HpDTC3を同定し,機能解析に着手している。このように当初予定していた研究成果が,順調に得られており,国内外での学会での成果発表を行っており,当初の計画にそって概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
イネにおいては,モミラクトンは根から放出されると同時に,また籾殻に多く蓄積する。モミラクトンは,強い抗菌活性も示すことから,次世代につながる種子を病原体から防御するため,籾殻に蓄積するとも考えられる。ハイゴケは原始体・茎葉体・仮根・胞子のうなど極めて単純な生活環と形態形成を示す。そこで,モミラクトン生合成遺伝子の発現が,様々なストレス条件・障害条件下で,ハイゴケのどのような分化段階で,どの組織で発現するのかをRT-PCRで解析し,各組織のモミラクトン蓄積量・応答量とあわせて,その生活環・形態形成とファイトアレキシンとの関係を解析すると同時に,蘚類ヒメツリガネゴケでのGUSレポーター形質転換体を用いた応答解析やハイゴケ・ゼニゴケ・タバコなどのへのモミラクトンの生理作用の検討なども行い、それらを合わせて本研究の最終年度として,国際学会での研究発表と学術論文としての成果発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に、次世代シークエンスによるハイゴケの遺伝子解析結果を検討し、昨年度にその解析結果を得て、組み換え実験に着手した。遺伝子取得の予備的な検討などで、かなり期間を必要として、その結果、物品の購入量が少なかった。最終年度には、国際学会での成果発表を3件予定しており、それらの旅費や、学術論文を作成しており、最終年度でのより一層の研究の加速ため、最終年度への予算配分を多く計画した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の使用計画通り、最終年度に国際学会発表と学術論文の投稿など研究成果の発表等を予定しており、予算配分を5割増にすることで、最終年度での予算不足を避けて、研究の一層の促進をうながす。
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