• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

量子ドットを用いたAβ凝集阻害物質の微量ハイスループットスクリーニング法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25350974
研究種目

基盤研究(C)

研究機関室蘭工業大学

研究代表者

徳樂 清孝  室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00332106)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードアルツハイマー / アミロイド / 量子ドット / Qdot / アミロイドβ / 香辛料 / 海藻 / ポリフェノール
研究概要

アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患は、脳内におけるアミロイドペプチドの凝集と蓄積が発症の引き金となる。そのため、アミロイドペプチドの凝集を阻害する物質は病気の予防薬や治療薬の有力候補となりうる。本研究は、量子ドットナノプローブを用いたアミロイド凝集阻害物質の微量ハイスループットスクリーニング法の開発と、当該手法を用いたアミロイド凝集阻害物質のスクリーニングを目的としている。
まず、スクリーニング法の確立に必須となる、1536ウェルプレート中で凝集したアミロイドβ(Aβ)凝集体量の定量化に取り組んだ。具体的には、実験に用いるAβや量子ドットナノプローブの濃度、またインキュベート時間等の条件検討を行い、凝集体の定量化に最適な条件を決定した。また、凝集体量を数値化するために、凝集体の蛍光顕微鏡写真の画像解析方法を確立した。最適化した凝集条件および定量化方法を用い、Aβ凝集阻害活性を有することが既に知られているポリフェノール類をポジティブコントロールとして、凝集体量が半分になる阻害物質の濃度(EC50値)を求めることに成功し、凝集阻害活性を数値として評価することが可能となった。
微量ハイスループットスクリーニングに関する基本的なシステムが確立したため、次に、本手法を用いて52種類の香辛料に対してAβ凝集阻害物質の網羅的スクリーニングを行った。まず、EtOH抽出物の活性を評価したところ、シソ科に属すハーブ系香辛料が高いAβ凝集阻害活性を示すことが明らかとなった。そこで、阻害活性が高かったハーブの一種であるサボリーから活性本体の単離を試みた。EC50値を阻害活性の指標として、溶媒分配および一連の液体カラムクロマトグラフィーを行い活性本体を単離した。単離した物質の構造を決定したところ、ロスマリン酸であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では、本年度は微量ハイスループットスクリーニング法の確立と、実際に本手法を用いた凝集阻害物質の網羅的スクリーニングを実施することとなっている。
微量ハイスループットスクリーニング法の確立については、1536ウェルプレートを用いることで、わずか5 μlのサンプル溶液でAβ凝集体量を定量化できるようになった。Aβ凝集体の定量は蛍光顕微鏡画像から画像解析により行い、そのデータを用いることで凝集阻害物質の凝集阻害活性をEC50値として数値化することが可能となった。これにより、微量ハイスループットスクリーニング法の基本原理はほぼ確立したと考えている。
本手法を用いた凝集阻害物質の網羅的スクリーニングについても、52種類の香辛料を対象に実際に行った。その結果、シソ科植物が高い凝集阻害活性を示すことが明らかとなり、またその活性本体がロスマリン酸であることを見いだした。ロスマリン酸がAβ凝集阻害活性を有することは既に報告されており、この結果は、本手法がAβ凝集阻害物質のスクリーニングに実際に使用できることを証明した。
以上の成果は、学会発表、査読付き原著論文、および図書で既に発表しており、本年度の研究目的はおおむね順調に進展していると自己評価した。

今後の研究の推進方策

これまでの成果により、シソ科植物が高いAβ凝集阻害活性を有すること、またその活性本体がロスマリン酸であることが明らかとなった。そこで、シソ科植物についてさらなるスクリーニングを進め、ロスマリン酸以外の新規阻害物質の探索に取り組む。現在までの予備検討で、あるシソ科植物が非常に高い凝集阻害活性を有すること、そしてその活性本体がおそらくロスマリン酸同族体であるということが明らかになりつつある。また、陸上植物だけでなく海藻類に対しても本手法を用いてAβ凝集阻害物質の網羅的スクリーニングを実施を開始した。以上の研究をさらに進め、本手法を用いて高いAβ凝集阻害活性を有する未知の物質の探索を行う予定である。
新規凝集阻害物質が単離できれば、それらの物質を用いて構造活性相関を明らかにするための研究を開始する。具体的には、これらの物質の誘導体を作成し、それによって阻害活性がどのように変化するのか解析し、さらなる阻害活性の強化を目指した誘導化を検討する。
また、本手法はAβ凝集阻害過程をリアルタイムでイメージング、定量化できるという特徴を有するが、これまでの予備検討で、短時間のインキュベートでオリゴマー形成阻害活性を定量化できる可能性が明らかとなってきた。Aβオリゴマーは高い神経毒性を持つことから、近年アルツハイマー病発症の主たる要因ではないかと考えられるようになっている。そこで、本手法を応用したAβオリゴマー形成阻害物質のスクリーニング法の確立を目指す。
得られた凝集阻害物質が実際に生理活性を有するか、まずは培養神経細胞を用いて評価し、有望な物質については、モデルマウスを用いてその効果の検証を行う。

次年度の研究費の使用計画

物品費および旅費について、計画と実際の価格の差額が生じたために、わずかの残金が残った。
次年度の消耗品の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A Microliter-Scale High-throughput Screening System with Quantum-Dot Nanoprobes for Amyloid-β Aggregation Inhibitors2013

    • 著者名/発表者名
      Ishigaki, Y., Tanaka, H., Akama, H., Ogara, T., Uwai, K., and Tokuraku, K.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 8 ページ: e72992

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0072992

    • 査読あり
  • [学会発表] 量子ドットナノプローブを用いたアミロイドβ凝集阻害物質の新規微量ハイスループットスクリーニングシステムの開発2013

    • 著者名/発表者名
      大柄俊貴、石垣有佳子、山口翔也、田中博幸、上井幸司、徳楽清孝
    • 学会等名
      日本生物物理学会第51回年会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府京都市)
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] 新規微量ハイスループットスクリーニング法を用いたシソ科ハーブからのアミロイドβ凝集阻害物質の探索2013

    • 著者名/発表者名
      石垣有佳子、田中博幸、大柄俊樹、上井幸司、徳楽清孝
    • 学会等名
      日本食品化学学会第19回総会・学術大会
    • 発表場所
      金城学院大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      20130829-20130830
  • [学会発表] Screening of Amyloid-β Aggregation Inhibitors by a Microliter-scale High-throughput Screening System with Quantum-dot Nanoprobes

    • 著者名/発表者名
      Tokuraku, K., and Uwai, K.
    • 学会等名
      Joint Seminar on Environmental Science and Disaster Mitigation Research 2014
    • 発表場所
      室蘭工業大学(北海道室蘭市)
  • [学会発表] 量子ドットナノプローブを用いたアミロイド凝集阻害物質の微量ハイスループットスクリーニング

    • 著者名/発表者名
      徳楽清孝
    • 学会等名
      2013年度日本生物物理学会北海道支部例会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
  • [図書] Bionanoimaging 1st Edition2013

    • 著者名/発表者名
      Tokuraku, K., and Ikezu, T.
    • 総ページ数
      526
    • 出版者
      Academic Press

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi