研究課題/領域番号 |
25350976
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
千葉 順哉 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (50436789)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シアル酸 / 医薬品探索 / アニオン / スルホクリック反応 / アシルスルホンアミド / スルホニルアジド / チオアミド / スルホニルアミジン |
研究概要 |
研究初年度となる平成25年度は、アシルスルホンアミドをカルボキシレート等価体として導入したシアル酸誘導体の合成を目指し、研究計画調書に沿って、以下の具体的項目について実験・検討を実施した。 「1. チオカルボン酸を導入したシアル酸遷移状態アナローグの合成」では、当初の予定通り、市販のシアル酸誘導体から3ステップで、目的のチオカルボン酸誘導体を得ることができた。しかしながら得られたチオカルボン酸化合物は、空気中ではやや不安定で単離精製すると収率が低下した。そこで、チオカルボン酸部位を保護した誘導体で保存し、反応に用いる際に脱保護して in situ で利用する方針とした。また別途、スルホクリック反応でカップリングさせる相方のスルホニルアジドを準備した。メシルクロリド・トシルクロリド・ベンゼンスルホニルクロリドを1段階でそれぞれアジド化した。 「2. アシルスルホンアミドをカルボキシレート等価体として導入したシアル酸誘導体の合成」では、「1」で合成したシアル酸のチオカルボン酸誘導体と、各種スルホニルアジドを用いて、チオカルボン酸部位の脱保護に続く in situ でのスルホクリック反応を行った。クリック反応は収率よく進行し、続いて得られたアシルスルホンアミド誘導体の水酸基を脱保護して、目的とする抗インフルエンザ新薬候補化合物を得た。また、スルホクリック反応の類似反応として、本研究室ではチオカルボン酸の代わりにチオアミドを用いた「チオアミド型クリック反応」を開発しきた。そして今年度、この反応が水中で最も効率よく進行することを発見した。そこで今後、スルホクリック反応と併用して、新薬候補化合物をライブラリー化する手法の1つに加えることにした。 以上の結果は、2件の特許出願と、1件の論文発表として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に予定していた「チオカルボン酸を有するシアル酸遷移状態アナローグの合成」と「アシルスルホンアミドを有するシアル酸誘導体のスルホクリック合成」は、ともに計画通りに達成することが出来た。加えて、新たに「チオアミド型クリック反応」が水中で最も効率よく進行することを発見し、化合物ライブラリーの充実に向け新たな手法を獲得した。そしてこれらの結果を特許出願2件、論文1件としてまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
1. チオアミド型クリック反応を利用した新薬候補化合物の作成 初年度までに発見した「チオアミド型クリック反応」をスルホクリック反応に加えて利用することで、新薬候補化合物を充実させる。これにより、アシルスルホンアミド部位の「アニオン性」に関して、その重要性を比較検討できる対象を得ることが可能となる。 2. アシルスルホンアミドを有するシアル酸プローブの合成とノイラミニダーゼに対する特異性評価 初年度に合成したアシルスルホンアミドを導入したシアル酸母骨格が、ノイラミニダーゼと特異的に相互作用するかどうかを評価する。その評価に必要なプローブとして、ジアジリンとビオチンを有するシアル酸光プローブをクリック反応により合成する。そして合成したプローブとノイラミニダーゼとの特異的会合を、化学発光を利用した阻害実験により評価する。 3. ライブラリー化合物を用いたノイラミニダーゼとの会合能評価による新薬候補化合物の探索 初年度に合成したシアル酸誘導体とノイラミニダーゼとの特異的結合を確認する1次スクリーニング法を開発する。合成した光プローブを利用することで、ある程度の結合能力情報を得つつ、結合力の強い候補群を絞り込む。また市販のキットを利用して、絞り込んだシアル酸誘導体とノイラミニダーゼとの解離定数を求める。これにより、新薬候補となる化合物をさらに絞り込む。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末(2014年3月27-30日)に開催された「日本薬学会第134回年会」の旅費が、年度またぎでの決済となったため。 次年度使用額は、2014年4-5月に、当該旅費が執行された段階で使用し、翌年度の研究助成金と合算して翌年度の研究に使用することはない。
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