研究課題/領域番号 |
25350977
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 久嗣 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 特定助教 (80512764)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子プローブ / MRイメージング / 高分子ナノプローブ / 多重共鳴NMR |
研究概要 |
平成25年度は、MR イメージングに有効な高い選択性と高い感度を持つ分子プローブとして、細胞膜脂質の一部であるホスホリルコリン骨格を 13C および 15N 核で二重ラベルしたポリマーナノプローブ(13C/15N-PMPC)を開発し、多重共鳴 NMR 法を応用した多重磁気共鳴イメージングにより 13C/15N-PMPC プローブのみを高選択的に画像化することに成功した。さらに、EPR 効果による受動的ターゲティング機能に加えて、腫瘍特異的な能動的ターゲティング機能を有するポリマーナノプローブ(13C-PMPC-anti-Her2 scFv)の開発に成功した。具体的には、①多重共鳴 NMR 法のパルス系列と 1H MRI で用いられる高速スピンエコー法を融合した多重磁気共鳴 イメージング測定法を開発した。②本手法を用いることにより、水や脂質などの内在性ノイズシグナルの完全消去に成功し、13C/15N-PMPC プローブのみの画像化に成功した。③13C/15N-PMPCプローブは、EPR 効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)の発現に適切な分子サイズを有し、本プローブがマウス腫瘍部位に高選択的に集積する挙動を in vivo で直接画像化することに成功した。④13C-PMPC-anti-Her2 scFv プローブは anti-Her2 scFv 修飾することにより、Her2陽性のがん細胞(N87)への集積性が向上することを明らかにするとともに、マウスN87腫瘍部位に高選択的に集積する挙動を in vivo で直接画像化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、in vivo での MR イメージングへの展開が可能な“高い選択性”と“高い感度”を有する分子プローブを開発し、その分子プローブの溶液中における多重共鳴MR画像化を検討するとともに、細胞、組織、動物レベルで分子プローブの有効性を評価することにより、多重共鳴NMR技術を基盤とする生体分子イメージングの新手法の開拓することが目標である。平成25年度では、実績概要で述べたとおり、MR イメージングに有効な高い選択性と高い感度を持つ新規ポリマーナノプローブを開発し、多重共鳴 NMR 法を応用した多重磁気共鳴イメージングにより本プローブのみを高選択的に画像化可能であることを明らかにした。さらに、本プローブがマウス腫瘍部位に高選択的に集積する挙動を in vivo で直接画像化することに成功した。この観点から、当初の計画以上に進展したと考えている。本テーマの一部は論文投稿し、現在審査中である。また、計画以上に進展した他の点として、EPR 効果による受動的ターゲティング機能に加えて、腫瘍特異的な能動的ターゲティング機能を有するポリマーナノプローブの開発に成功し、能動的ターゲティング機能を有するポリマーナノプローブの有効性について一定の知見を得たことである。当初の計画では、乳がん抗原 Her2 に作用する抗 Her2 抗体(anti-Her2 scFv)を導入したポリマーナノプローブの設計・合成までが本年度の予定であったが、本プローブがHer2陽性のがん細胞(N87)へ選択的に集積する様子をin vivo で直接画像化することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、研究計画に大きな変更はない。本年度で得られた腫瘍特異的な能動的ターゲティング機能を有するポリマーナノプローブの標的部位の最適化を進め、本プローブの更なる高機能化を図る。さらに、EPR 効果による受動的ターゲティング機能を有するPMPCナノプローブの更なるシグナル感度向上およびがん集積性の向上を目指して、直鎖PMPCナノプローブをスター型 PMPCナノプローブへと展開する。また、新たにナノ組織化した13C/15N-ラベル化分子プローブの設計・合成に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究には、分子プローブの合成・機能評価に必要な有機合成試薬、安定同位元素試薬、生化学関連試薬、ガラス器具、培養関連プラスチック製品、実験動物等の消耗品が必須である。これらは年度を問わず購入せざるを得ないため、繰り越した研究費を充当することにより、本研究のより一層の進展を見込んでいる。 研究費の使用計画に大きな変更はない。研究費は分子プローブの合成・機能評価、培養細胞を用いる機能評価、実験動物を用いた機能評価に必要な消耗品の購入に充当し、その費目として計上している。また、研究遂行にあたり、関連研究を進めている国内外の研究グループと議論ならびに資料収集を行なう必要があり、その旅費を計上している。研究成果を海外論文誌に投稿するにあたり、外国語論文の校閲料、雑誌投稿費用を計上している。
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