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2014 年度 実施状況報告書

改良型二次元インゲルホスファターゼアッセイの確立とホスファターゼ研究の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 25350978
研究機関香川大学

研究代表者

亀下 勇  香川大学, 農学部, 教授 (60127941)

研究分担者 末吉 紀行  香川大学, 農学部, 准教授 (90346635)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードタンパク質リン酸化 / 二次元電気泳動 / プロテインホスファターゼ / インゲルアッセイ / 翻訳後修飾 / 酸化還元 / 活性制御機構
研究実績の概要

本研究課題は、以下の2点に焦点を絞って研究を実施してきた。(1)ホスファターゼ活性をゲル内で検出するインゲルホスファターゼアッセイ法を確立し、ホスファターゼ研究に応用する。(2)CaMKホスファターゼ(CaMKP)をはじめとして様々なホスファターゼの活性制御メカニズムに関する研究を発展させる。(1)の手法の確立に関しては昨年度ほぼ完了しているので、その手法を用いてPPMファミリーのホスファターゼの研究を進めた。また、CaMKPとCaMKP-N以外のPPMホスファターゼに関しても並行して研究を進めた。まず、インゲルホスファターゼアッセイ法を用いることにより、PPM1A、B、D、E(CaMKP-N)、F(CaMKP)、G、Hの各アイソフォームの活性を検出できることを明らかにした。まずこれらPPMファミリーの各アイソフォームについて酸化、還元処理に対する感受性をインゲルホスファターゼアッセイ法を用いて、分析を行った。PPM1DとHが酸化還元処理に非感受性であるのに対し、それ以外のホスファターゼは酸化還元処理に感受性を示す、つまり酸化処理により活性が低下し、還元処理で活性の増大が見られることがわかった。これらのホスファターゼのアミノ酸変異体を作製し解析を行ったところ、PPM1A、B、E、F、Gにおいては、金属イオン配位部位に存在するAsp残基のN末端側に存在するCys残基の酸化還元によって活性が制御されることが明らかになった。また、インゲルアッセイによりCaMKPの解析を行ったところ、モノマー酵素と考えられていたCaMKPが、モノマー、ダイマーだけでなくオリゴマーを形成することが明らかになった。このようにCaMKPは、酸化還元だけでなくモノマー・オリゴマー転換によっても活性の制御が行われている可能性が示されたので、今後はそのメカニズムの詳細についても解析を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題においては、ほぼ当初の年次計画に沿って研究を進めることができた。初年度にインゲルホスファターゼアッセイ法を確立し、その手法を用いることにより様々なホスファターゼの活性を電気泳動後に検出することを可能にした。年次計画通りに、PPMファミリーの各アイソフォームを大腸菌で発現し精製酵素を取得し、それらの解析を進めた。これらのアイソフォームは酸化還元処理を行った際、その感受性がアイソフォームにより異なることを見出した。また、その感受性の原因を明らかにする目的で、様々なアミノ酸変異体酵素を作製し、それらの酸化還元処理に対する感受性を分析した結果、その感受性の差がホスファターゼ活性に重要なメタル配位部位近辺のCys残基の有無に起因することなどを明らかにした。さらにネイティブゲル電気泳動を用いた解析により、CaMKPがモノマーからオリゴマーまで様々な会合状態で存在することを見出し、インゲルアッセイによる分析により、オリゴマーを形成したCaMKPには活性がなく、モノマー酵素がホスファターゼ活性を示すことを明らかにした。これらの発見は、インゲルホスファターゼアッセイを確立したことにより、初めて見出すことができた新事実であり、このような新しい知見が得られた点は、PPMファミリーホスファターゼ研究の流れの中での新展開と考えられる。このような研究成果を総合的に判断すると、本研究課題はおおむね順調に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究において、CaMKPがオリゴマーの形成により活性制御を受ける可能性が示された。特に、モノマー(活性型酵素)とオリゴマー(不活性型酵素)の可逆的な変換がどのようなメカニズムで制御されているかについては、非常に興味深い課題であり今後その解析を進める予定である。また、PPMファミリーの中でも、PPM1A、PPM1BとPPM1Hの解析を進めてきたが、その中でも特に、PPM1Hは、これまでその機能解析に関してほとんど研究が進んでいないので、そのPPM1Hについては特に力を入れて研究を展開したい。PPM1Hについては、最近、N末端領域とC末端領域のそれぞれを認識する抗体を2種類取得しており、このホスファターゼの発現時期や発現部位などに関しての解析をスタートしたところである。また、ごく最近PPM1Hが多機能性CaMキナーゼにより非常に効率よくリン酸化されるという興味深い現象を見出したので、最終年度には、そのリン酸化部位の決定ならびにリン酸化の意義について明らかにしたいと考えている。このように、今年度はPPMファミリーホスファターゼの活性制御メカニズムに関する研究を展開し、研究成果としてまとめる予定である。

次年度使用額が生じた理由

予算は適切に執行したが、次年度以降の研究計画をスムーズに実行するために、消耗品類の使用を節約しながら研究課題に取り組んだために、予定よりも支出を抑えることができた。繰り越した予算は、27年度の研究を一層効果的に発展させる目的で活用したいと考えている。

次年度使用額の使用計画

研究計画最終年度に入り、研究課題に取り組む研究室メンバーの仕事も軌道に乗ってきた。そのため、27年度は研究をさらに発展させる目的で、様々な抗体等消耗品類の購入に予算を使用する予定である。また、スペインで開催される国際学会で研究発表を行うために、海外出張旅費として研究費を使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] TandeMBP: Generation of a unique protein substrate for protein kinase assays2014

    • 著者名/発表者名
      Kameshita, I., Yamashita, S., Katayama, S., Senga, Y., Sueyoshi, N.
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 156 ページ: 147-154

    • DOI

      10.1093/jb/mvu025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cellular localization of CoPK12, a Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase in mushroom Coprinopsis cinerea,is regulated by N-myristoylation2014

    • 著者名/発表者名
      Kaneko, K., Tabuchi, M., Sueyoshi, N., Ishida, A., Utsumi, T., Kameshita, I.
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 156 ページ: 51-61

    • DOI

      10.1093/jb/mvu018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CaMKII is essential for the cellular clock and coupling between morning and evening hehavioral rhythms2014

    • 著者名/発表者名
      Kon, N., Yoshikawa T., Homma, S., Tamagata, Y., Yoshitane, H., Shimizu, K., Sugiyama, Y., Hara, C., Kameshita, I., Homma, K., Fukada, Y.
    • 雑誌名

      Gen. Dev.

      巻: 28 ページ: 1101-1110

    • DOI

      10.1101/gad.237511.114

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effects of calmodulin on expressionof lignin-modifyingenzymes in Pleurotus ostreatus2014

    • 著者名/発表者名
      Suetomi, T., Sakamoto, T., Tokunaga, Y., Kameyama, T.,Honda, Y., Kamitsuji, H., Kameshita, I., Izumitsu, K., Suzuki, K., Irie, T.
    • 雑誌名

      Curr. Genet.

      巻: 14 ページ: 1-14

    • DOI

      10.1007/s00294-014-0460-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 液相等電点泳動を用いた二次元泳動法の活用2014

    • 著者名/発表者名
      杉山康憲、片山将一、馬場裕美、末吉紀行、亀下勇
    • 雑誌名

      電気泳動

      巻: 58 ページ: 56-58

    • DOI

      10.2198/sbk.58.56

    • 査読あり
  • [雑誌論文] インゲルキナーゼアッセイ法~その後の進歩2014

    • 著者名/発表者名
      石田敦彦、亀下勇
    • 雑誌名

      電気泳動

      巻: 58 ページ: 62-64

    • DOI

      10.2198/sbk.58.62

    • 査読あり
  • [学会発表] CaMKIdeltaによるDistal-less homeobox 1 を介した骨形成メカニズム2014

    • 著者名/発表者名
      千賀由佳子、杉山康憲、亀下勇、末吉紀行
    • 学会等名
      日本分子生物学会年回
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-28
  • [学会発表] ゼブラフィッシュに存在する2種類のCDKL5のスプライスバリアントの比較解析2014

    • 著者名/発表者名
      片山将一、千賀由佳子、大井愛海、三木洋祐、杉山康憲、末吉紀行、亀下勇
    • 学会等名
      日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-28
  • [学会発表] プロトカドヘリンγC5を介したCaMKホスファターゼの制御メカニズム2014

    • 著者名/発表者名
      小野内貴士、亀下勇、末吉紀行
    • 学会等名
      日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-28
  • [学会発表] PPMホスファターゼは金属配位部位に隣接するCys残基の酸化還元によって活性制御を受ける2014

    • 著者名/発表者名
      馬場裕美、末吉紀行、亀下勇
    • 学会等名
      日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-28
  • [学会発表] Exploration of an endogenous substrate for DCKL5, a protein kinase associated with X-linked neurodevelopmental disorders2014

    • 著者名/発表者名
      katayama, S., Sueyoshi, N., Kameshita, I.
    • 学会等名
      第15回IUBMB
    • 発表場所
      台北
    • 年月日
      2014-10-22 – 2014-10-24
  • [学会発表] 大腸菌発現系を用いた高活性型CaMKP-Nの取得とその利用2014

    • 著者名/発表者名
      朝波彰、小野内貴士、馬場裕美、亀下勇、末吉紀行
    • 学会等名
      日本生化学会本会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] カルシウムがなくても潜在的活性化状態にあるホスファターゼ抵抗性CaMKIアイソフォーム2014

    • 著者名/発表者名
      千賀由佳子、石田敦彦、茂里康、亀下勇、末吉紀行
    • 学会等名
      日本生化学会本会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] 金属依存性プロテインホスファターゼPPM1Bの機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      樫村明理、渡辺真以、馬場裕美、小野内貴士、亀下勇、末吉紀行
    • 学会等名
      日本生化学会中四国支部例会
    • 発表場所
      愛媛
    • 年月日
      2014-06-05 – 2014-06-06
  • [学会発表] Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼホスファターゼの機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      小野内貴士、馬場裕美、亀下勇、末吉紀行
    • 学会等名
      日本生化学会中四国支部例会
    • 発表場所
      愛媛
    • 年月日
      2014-06-05 – 2014-06-06

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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