研究課題
基盤研究(C)
レスベラトロールのアザ誘導体(ARVD)の細胞毒性に対するMIFの保護作用(アポトーシス回避機構)を評価するために、ARVDに感受性をもつMCF7および非感受性であるA549の2細胞株にi. MIFのcDNA、ii. MIFのshRNAの発現誘導ベクターをそれぞれ導入した。MIFの過剰発現(上記i)によるARVDに対する感受性の変化は両細胞株とも見られなかったが、癌細胞株にはもともと正常細胞と比べてMIFが過剰発現していることから、MIFの強制発現による上乗せ効果は見込まれないと考えられた。一方、MIFのノックダウン(上記ii)によるARVD感受性の亢進がA549細胞で見られたことから、MIFはARVDの(活性酸素による)細 胞毒性から細胞を保護する作用を有するという仮説が裏付けられた。上記MIFの保護作用における機序の第一段階として、MIFがNFkBを活性化する経路が有力だが、これを証明するために、ARVDの添加後にNFkBの下流にあるアポトーシス誘導性キナーゼ(JNK)のリン酸化をウェスタンブロッティングで解析した。この場合、リン酸化の消失がJNKの不活性化(およびNFkBの活性化)の指標となる。コントロールおよびMIFをノックダウンしたA549株にARVDを添加すると、前者よりも後者のほうが、リン酸化の亢進を認めた。すなわち、ノックダウン株ではMIFの発現低下にともない、NFkBの活性化が弱まり、その結果JNKの抑制が起こらず、細胞にアポトーシスを誘導することが考えられた。新規誘導体として、細胞に活性酸素を生成しやすくする水酸基(還元力)を増やしたもの、-OHを-OMeに変えて疎水性すなわち細胞膜透過性を高めたもの、MIFとの親和性を生じさせた構造的要因となるレスベラトロール骨格におけるC=Nの位置を入れ替えたもの、など数化合物を合成した(連携研究者担当)。
2: おおむね順調に進展している
3年間の研究計画として以下の事項を示している。1. MIFのアポトーシスからの回避機構についての解析a. MIFによるROSからの細胞保護作用(アポトーシス回避機構)の評価。b. MIFによるJNKの不活性化の評価。c. MIFによるJNKの不活性化の経路についての検討。d. ROSがMIFをup-regulateする可能性の検討。e. RVのアザ誘導体による増殖抑制効果のmode of actionに関わる遺伝子群を探索する。2.MIFとのドッキングによる新規レスベラトロール誘導体の創製および細胞毒性の評価a. 新規レスベラトロール誘導体のデザイン。b. 新規レスベラトロール誘導体のアッセイおよび最適化。これらのうち、1-aおよびb、2-aは終了しており、1年分のペース配分としておおむね順調に進展していると考える。
「現在までの達成度」で示した未遂行項目のうち、2年目は1-c, 1-d, 2-bを行う予定である。1-cでは、ARVDの添加後に、NFkBのDNA結合能をゲルシフトアッセイ法で評価し、MIF発現(ノックダウン)の有無により、NFkBの転写活性がどのように変化するか調べる。これによりMIFとNFkBがリンクしているかどうか推定可能である。1-dでは、MCF7細胞にARVDを添加したのち、培地中へのMIFの分泌量をElisaで、MIFのmRNAの変化をリアルタイムPCRで測定し、ROSがMIFをup-regulateする可能性を検討する。2-bでは、新規誘導体化合物を1)細胞に添加し、細胞増殖抑制の濃度依存性をMTT法で測定、2)MIFに対する結合能を、MIFのもつ酵素反応(ドーパクロムメチルエステルの異性化反応)に対する阻害活性にて評価を行うことにより、低濃度におけるがん細胞増殖抑制および正常細胞への低毒性の実現に向けて化合物の最適化を図る。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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