研究課題/領域番号 |
25350981
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
川谷 誠 独立行政法人理化学研究所, 長田抗生物質研究室, 専任研究員 (50391925)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
ピリミジン塩基を新規に合成するde novoピリミジン生合成経路は、増殖が盛んながん細胞で亢進していることから、薬剤標的として有望である。一方、申請者はこれまで、de novoピリミジン生合成経路を強力かつ選択的に阻害する低分子化合物DI-01を見出してきた。本研究は、DI-01をシード化合物としてde novoピリミジン生合成経路を標的とした新規抗がん剤を開発することを目的とする。本年度は主にDI-01の薬物動態解析および構造最適化を行った。 1. DI-01をマウスに経口あるいは腹腔内投与し、血中濃度の経時変化をHPLCで解析した。また、各組織を摘出してDI-01の組織移行性について検討した。その結果、DI-01は経口投与および腹腔内投与で吸収されたが、経口投与によるバイオアベイラビリティーは低かった。また、DI-01は広い組織移行性を示し、特に肺組織への移行性が高かった。 2. In vitro溶液沈殿法を用いてDI-01の溶解度を測定した。また、ヒト、マウス、ラット由来のミクロソーム画分を用いてin vitro代謝安定性試験を実施した。その結果、DI-01は溶解性が低くかつ代謝的に不安定であることがわかった。 3. DI-01の溶解性および代謝安定性の向上を目的に、DI-01の誘導体合成を行った。複合体のX線結晶構造情報に基づいて、数十種類のDI-01誘導体を合成し、構造活性相関解析を行った。その結果、いくつかの誘導体についてはDI-01と同等の活性を示した。これらはいずれも細胞内で加水分解を受け、本体のDI-01に変換されるプロドラッグとして作用していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主にDI-01の薬物動態解析と構造最適化を計画、実施した。DI-01は経口投与によるバイオアベイラビリティーが低かったが、その後の物性解析で、その原因が溶解性の低さと代謝的不安定さに起因していることがわかった。そのため、DI-01の溶解性および代謝安定性の向上を目的にDI-01の誘導体合成に着手し、構造最適化のステップへ進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにDI-01誘導体の合成を進め、得られた誘導体については順次生物活性、溶解性、代謝安定性(構造活性相関)を調べていく。これを繰り返すことによりDI-01の構造最適化を進め、有望な誘導体が得られ次第、担がんマウスを用いてin vivoにおける抗腫瘍効果を調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬物動態解析にかかる物品費が当初見込んでいた費用を下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
この残額は次年度の物品費として使用する予定である。
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