研究課題/領域番号 |
25350983
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
呉 純 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (90415646)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発光プローブ / ペプチド / ファージ / アプタマー / 生物発光共鳴エネルギー移動 / ルシフェラーゼ / 蛍光タンパク質 / スクリーニングこ |
研究概要 |
本研究は、低分子化合物を可視化する新規の発光プローブの創製ならびに光イメージング法の確立を目指すものである。具体的には、低分子化合物を挟む二種類のペプチドやアプタマーをスクリーニングし、ルシフェラーゼや蛍光タンパク質に融合させることによって、低分子化合物の生物発光エネルギー移動機構に基づく生物発光プローブの創製を計画した。本年度では、分子量384 ダルトンであるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を標的とする発光イメージングプローブの開発を行った。まず,化合物SAHのホモシステイン部分の一級アミノ基を介してマグネットビーズに固相化し、ファージディスプレイ技術を用いてアデノシン骨格に結合するペプチドのスクリーニングを行った。得られたファージクローンのDNA配列の情報を特定することができた。次に、ホモシステイン化合物のチオール基を介して同様に固相化し、ホモシステインに結合するペプチドのスクリーニングを行った。しかし、ファージクローンから特異的に結合する配列を特定することができなかった。そこで、アデノシンの実験で得られたペプチド配列をもとに、合成したペプチドとSAHとの複合体を調製し、その複合体に対してファージスクリーニングを行った。その結果ファージクローンの配列においてある程度の傾向が見られた。現在、得られたペプチド候補の親和性の確認を進めている。一方、化合物SAHは不安定なため、SAHのモノクローナル抗体を利用して、SAHをミミックするペプチドの探索を行った。その結果、得られたペプチドの配列はELISAアッセイにおいてSAHを代替することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的は、低分子化合物を可視化する新規の発光プローブの創製ならびに光イメージング手法の開発である。一年目の目標は、低分子化合物S-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を挟む二種類のペプチド分子の選抜であった。これまで、化合物SAHのホモシステイン部分の一級アミノ基を介してマグネットビーズに固相化し、ファージディスプレイ技術を用いてアデノシン骨格に結合するペプチドを選抜することができた。また、得られたペプチド配列をもとに、化学合成したペプチドと化合物SAHの複合体を調製し、その複合体に対してファージスクリーニングを行った結果、ファージクローン配列に特徴が見られた。現在、得られた数種類のペプチド候補の親和性の確認を進めている。一方、化合物ホモシステインのチオールを介してマグネット固相化しても、ファージスクリーニングによってホモシステインに結合するペプチド配列を特定することには至らなかった。これは、おそらくホモシステインの親水性が高いからだと考えられる。一方、化合物SAHは不安定なため、SAHのモノクローナル抗体を利用し、SAHをミミックするペプチドの探索についても検討した。その結果、得られたペプチドの配列はELISAアッセイにおいてSAHを代替することができた。このペプチドはSAHに結合するニ種類ペプチドのファージスクリーニングという目的にも利用できるかどうかについて検討中である。以上のことから、本年度の研究目的の達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、低分子化合物を挟む二種類のペプチドやアプタマーを探索し、ルシフェラーゼや蛍光タンパク質に融合させることによって、生物発光エネルギー移動機構に基づく生物発光プローブの創製を進めている。これまで、低分子化合物S-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を挟む二種類のペプチド分子の選抜を行った。次年度以降、得られた結果をもとに、数種類のペプチド候補の親和性を確認しながら、その最適配列を決定する。次に最適化されたニ種類ペプチド配列を様々なルシフェラーゼや蛍光タンパク質との融合タンパク質の作製を試みる。具体的には選定されたファージクローンのDNA配列は、オーバーラップエクステンションPCR法でルシフェラーゼまたは蛍光タンパク質の上流や下流に融合させてから増幅させる。無細胞翻訳系(PURExpress® In Vitro Protein Synthesis Kit, NEB社)を用いて融合タンパク質の転写と翻訳を行う。さらに、融合発光タンパク質や蛍光タンパク質を用いて、SAHの濃度に依存する生物発光共鳴エネルギー移動の効率について調べる予定である。そのほか、SAHをミミックするペプチドを用いて、それを挟む二種類のペプチドの探索を試みる。また、最近SAHに結合するRNAアプタマーが報告され、その高次構造が明らかになったので、このRNAアプタマーを用いたルシフェラーゼによる光イメージングプローブの開発についても検討する予定である。
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