本研究は低分子化合物であるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を可視化する新規光プローブの創製ならびに低分子化合物の発光イメージング法の確立を目指すものである。これまで、SAHのホモシステイン部位の2級アミン基を介して固相化し、アデノシン環に結合するファージクローンを同定し、そのファージのDNA配列の情報を基に調製したビオチン化したペプチドとSAHとの複合体に対してファージスクーニングを行い、複合体に結合するファージクローンを得ることに成功していた。今年度は、SAHに結合する一分子発光プローブを完成させるため、まず得られた2つのペプチドのDNA配列の間にさらに21merのランダムオリゴヌクレオチドを挿入し、T7ファージDNAベクターに組み込んで大腸菌に感染させることによって得られたファージライブラリーを新たに作製した。次に、作製したライブラリーを用いて再度S-アデノシル-L-ホモシステインに対するバイオパンニング実験を行い、得られた複数のファージクローンのDNA配列を解析した。それから、得られたファージクローンのDNA配列情報を基に、ルシフェラーゼと蛍光タンパク質のDNA配列の間に同定したファージクローンのDNA配列を挿入したプラスミドを調製し、市販の無細胞翻訳系キットを用いて融合タンパク質を調製した。さらに、その融合タンパク質溶液中に化合物SAHを加えて一分子生物発光共鳴エネルギー移動現象の観測を行った。
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