研究課題/領域番号 |
25350987
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
櫻井 武 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90615717)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統合失調症 / マウスモデル |
研究実績の概要 |
統合失調症は遺伝的要因に環境要因等が加わって脳の発達段階に何らかの異常が起こった結果青年期に発症すると考えられる慢性の精神疾患である。その病態の理解にはヒトで見られる遺伝的変化を反映するマウスモデルが有用であると考え、本研究ではそのマウスモデルの開発と解析を通じて統合失調症の病態に関わる脳の発達期に起こる現象とその異常を捉えることを目標とする。 昨年度に引き続き、統合失調症を伴う微小染色体欠損が起こる領域であるヒト染色体の1q21.1に対応するマウスの3qの領域を、CRISPRを用いた手法でマウス染色体から欠損させることを試みたが、この領域はリピート配列が多くまた欠損のサイズがマウスで1.1Mbpと巨大であることなどから未だに我々の目的に合致した欠損を持つ染色体領域の修飾を得られていない。 一方、目的とするマウスを得られた際に計画しているマウスの脳の発達期に起こる現象とその異常を捉えそれをヒトでの成果と比較できる体制を整えるため、マウスの脳発達過程の詳細を明らかにすることをめざしているが、認知機能に関わるマウスの前頭前野の発達過程をそのマーカー遺伝子の発現によって明らかにし、その過程で環境要因が加わる時期によってそれぞれ影響を受ける生物学的過程が異なり、成熟してから見られる行動異常にも差がある可能性を見いだした。これは脳発達の時期に応じた生物学的過程とそれによって獲得される脳機能(行動)をマウスにおいて今一度詳細に解析して整理する必要性を示唆する。そのためには発達段階における行動の発達を評価する系が必要があるが、昨年度に導入した集団飼育型の自動行動解析システムインテリケージは発達段階の行動を見る上では少し系が複雑であると考えられたので、タッチパネルを利用した認知機能計測する行動タスクをマウスの発達段階を追って行える様に最適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発達精神障害の病態を明らかにするためのマウスモデルの解析方法に関しては順調にデータを蓄積しているが、マウスモデルの作製において目的とする染色体修飾がその領域の構造の複雑さや目的とする欠損のサイズのためかうまくいっていないため。
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今後の研究の推進方策 |
最近マウスで1Mbpの欠損を約1%の効率で達成することが出来たという報告が海外のグループからでたのでそれをもとに国内国外の研究者と連絡を取り情報交換を進めながら目的とする染色体修飾を達成する様に努力する。 認知機能に関わる前頭前野の発達の過程とそれに合わせた発達期における行動タスクにおける能力の獲得の程度を関連させるため発達期での認知機能の行動解析法をマウスで確立しそのベースラインのデータ収集を行う。 さらに統合失調症に関わるとされている神経回路に含まれる様々な脳領域の発達期における生物学的過程のタイムコースを前頭前野と比較しながら解析し、回路レベルでの脳機能の発達への関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的とする染色体修飾が遅れておりそれに伴い次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
染色体修飾の新しい方法論の確立と最適化に使用する。
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