研究課題
本研究では、精神疾患を恒常性維持機構の破綻としてとらえ、精神疾患動物モデルおよびバイオインフォマティクス手法を活用し、精神疾患の中間表現型候補である非成熟歯状回の分子メカニズムの解明、さらにその治療法として成熟度を正常化させる手法の開発を行うことを目的としている。これまでに精神疾患様の行動異常を示す Shn2 KO マウスをモデルとして、バイオインフォマティクス手法を活用して海馬歯状回の成熟度に変化を与えるような薬物の探索を行い、複数の候補物質を得ている。そのうちのいくつかについて実際に Shn2 KO マウスに投与を行い、Shn2 KO マウスでみられる行動異常が改善されるかどうか検討を行った。また、神経細胞には活動の強弱によりシナプス強度や神経細胞そのものの興奮性が変化する「ホメオスタティック可塑性」という現象があることが知られている。光遺伝学による歯状回神経細胞の興奮性操作によってホメオスタティック可塑性が起これば、歯状回の脱成熟についても変化を引き起こすことができると考えられる。本年は、Cre-1oxPシステムを用いて光感受性タンパク質であるチャネルロドプシン2: ChR2を歯状回に発現させたマウスの歯状回に in vivo で局所的に光刺激を与え、行動特性の変化および歯状回神経細胞の成熟度の変化を検討した。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画では、本年度と来年度で in silico スクリーニングで得られた歯状回成熟度を調節する薬物の候補の動物モデルでのスクリーニングと、光遺伝学による in vivo での海馬歯状回の特異的刺激の効果を行動レベルと海馬歯状回の成熟度で検討を行う予定であった。これらについては全て本年度に着手されており、来年度に成果が期待できる。よって本研究は現在のところおおむね順調に進展しているといえる。
本年度に実施した in silico スクリーニングに基づき、in vivo の動物実験モデルによって検証と最適化を行う。薬物および実験操作の in silico 探索は引き続き行う。また、光遺伝学のシステムを用いて歯状回神経細胞の興奮性を選択的に亢進もしくは抑制し、行動や歯状回神経細胞の成熟度を変化させるのに最適なパラダイムを探索する。
本年度、解析のためのコンピュータを備品として購入したが、購入したのが年度の後半以降であったため書類上次年度の支出となってしまった。また、光遺伝学に用いるマウスの繁殖が予定より少なかったため、マウスの繁殖飼育および光遺伝学実験の消耗品のための予算については余裕が生じた。研究の進展は当初の予定通り進んでおり、次年度には大規模なマウスの繁殖を行う予定であり、本年度計上していた予算は次年度に使用する予定である。
本年度予算の次年度使用額については、次年度の予算と合わせ光遺伝学に用いるマウスの大規模な繁殖と、光遺伝学の実験のための消耗品に用いる。その他、本年度購入した解析用のコンピュータの支払いにも充てる。
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