研究課題
本研究では、精神疾患を恒常性維持機構の破綻としてとらえ、精神疾患の動物モデルおよびバイオインフォマティクス的手法を活用し、精神疾患の中間表現型候補である非成熟歯状回の分子メカニズムの解明、さらにその治療法として成熟度を正常化させる手法の開発を行うことを目的として研究を実施した。神経細胞には活動の強弱によりシナプス強度や神経細胞そのものの興奮性が変化する「ホメオスタティック可塑性」という現象があることが知られている。光遺伝学によって海馬歯状回の神経細胞の興奮性を操作することでホメオスタティック可塑性を引き起こすことができれば、歯状回の成熟度についても変化を引き起こすことができると考えられる。Cre-loxPシステムを用いて光感受性タンパク質であるチャネルロドプシン2(ChR2)を歯状回特異的に発現させてマウスの歯状回に in vivo で局所的に光刺激を与え、行動特性の変化及び歯状回神経細胞の成熟度変化について検討した。海馬歯状回を局所的に光刺激することで興奮性が人為的に亢進したマウスでは、いくつかの行動異常を確認することができた。それらの行動異常には統合失調症モデルマウスである Shn2 KO マウスと同方向のものがあった。また、海馬歯状回を局所的に光刺激することで興奮性が人為的に亢進したマウスの海馬歯状回では、成熟度も変化していることを示唆するデータも得られた。これらの研究成果については今後さらなる解析を行い、論文としてまとめて発表する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件)
Molecular Brain
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