研究課題/領域番号 |
25350997
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
川嵜 圭祐 新潟大学, 医歯学系, 助教 (60511178)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カテゴリ認知 / 視覚認知 / 皮質脳波 |
研究実績の概要 |
下側頭葉皮質は物体認識に不可欠な脳領域であり、下側頭葉ニューロンの活動は物体を同定するために必要な情報を符号化している。最近、申請者らは下側頭葉皮質全域から記録可能なサル皮質脳波実験系を確立し、活動の時空間パターンを高い時空間分解能で可視化することに成功した。活動が伝搬し、刺激選択的なパターンが立ち現れる様子を捉えることができた。では広域にわたり分散して符号化された情報がどのように読み出されるのか?読み出し方法に関する仮説の一つは広域に分散した情報すべてを読み出しているとする“分散読み出し仮説”である。対極の仮説はごく一部のニューロン集団の情報のみを読み出しているとする“局所読み出し仮説”である。脳刺激法は読み出し方法を実験的に検証するために非常に有力な方法である。これまでによく用いられてきた微小電気刺激法は、特に“局所読み出し仮説”を検証する際には決定的な証拠を提供することができた。MT野等の皮質領野では様々な視覚属性に対して電気刺激の効果が検証され、詳細な読み出し方法が検討されている。しかし、側頭葉皮質では電気刺激の効果の報告例は少ない。この理由は行動課題が側頭葉機能をうまく捉えていない可能性の他に、微小電気刺激法では分散読み出し仮説をうまく検証できていない可能性がある。本研究では視覚認知課題遂行中のサルに、下側頭葉皮質全域にわたる時空間パターン電気刺激を行い、皮質内に分散して表現された物体情報がどのようにして読み出されるのか明らかにすることを目的とする。本研究期間では、多チャンネル刺激電極および、多チャンネル刺激装置の確立に取り組んだ。また刺激パターンを決定するための皮質応答パターンの解析において、情報量の流れをもとにした方法で全記録部位のごく一部、しかし、空間的には広がった数点が、視覚刺激において情報のやり取りを活発に行うことが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では視覚認知課題遂行中のサルに、下側頭葉皮質全域にわたる時空間パターン電気刺激を行い、皮質内に分散して表現された物体情報がどのようにして読み出されるのか明らかにすることを目的とする。サルにカテゴリ判別課題を習得させるための訓練、多チャンネル刺激記録システムの構築は順調に進んだ。多チャンネル刺激電極の作成についてはデザインの決定、制作工程の最適化に時間がかかり、当初の計画より進展が遅れた、安定性テストののち早急に電極の留置をおこなう予定である。一方、多点刺激パターンを検討するためのカテゴリ判別課題中の皮質応答パターンの解析において、情報量の流れをもとにした方法で全記録部位のごく一部、しかし、空間的には広がった数点が、視覚刺激において情報のやり取りを活発に行うことが見出された。これは多点刺激法によって検証を行なうべき重要な仮説を見出すことができたと考えられる。全体としてはほぼ順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では視覚認知課題遂行中のサルに、下側頭葉皮質全域にわたる時空間パターン電気刺激を行い、皮質内に分散して表現された物体情報がどのようにして読み出されるのか明らかにすることを目的とする。カテゴリ判別課題を習得させるための個体の訓練、および多チャンネル刺激記録システムの構築、刺激電極の作成は目標のレベルに達したので、今後、下側頭葉皮質に皮質脳波電極を留置して、多点パターン刺激をおこなったときの行動変化を検討していく。情報流の解析により見出された分散した特異点(全記録部位のごく一部、しかし、空間的には広がった数点が、視覚刺激において情報のやり取りを活発に行う)、が他の点のパターン刺激に比べて効果が大きいかという点を中心に検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
多点刺激電極のデザインを決定するのに計画より時間がかかったため、作成の進行がやや遅れた、そのための研究費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
デザインは決定したので、今年度、多点刺激電極を作成するために使用する。
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