研究課題/領域番号 |
25351002
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
佐野 裕美 生理学研究所, 統合生理研究系, 特別協力研究員 (00363755)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 大脳基底核 / 運動 / 光遺伝学 / 線条体 / 大脳皮質運動野 |
研究概要 |
運動の制御に重要であることがよく知られている大脳基底核において、線条体-淡蒼球外節投射ニューロン、大脳皮質-線条体投射ニューロンの3種類の経路について、光遺伝学を利用してこれらの経路が大脳基底核の活動を調節する機構の解析を行った。 線条体投射ニューロンおよび線条体-淡蒼球投射ニューロンの解析には、線条体投射ニューロンあるいは線条体-淡蒼球外節ニューロンに光受容体であるchannelrhodopsin-2(ChR2)を発現するトランスジェニックマウス(PDE10A2-tTA/tetO-ChR2マウス、D2R-tTA/tetO-ChR2マウス)を用いた。最初に、線条体投射ニューロン、線条体ー淡蒼球外節ニューロンが光照射に応じて興奮することを確認するため、線条体に記録電極と光ファイバーを接着したオプトロードを刺入し、光刺激に応じた興奮を確認した。次に、線条体を光刺激したときの応答を投射先である淡蒼球外節や黒質網様部から記録した。淡蒼球外節では主に「抑制-興奮」という応答が認められた。黒質網様部では線条体投射ニューロンを興奮させたときは主に「抑制-興奮」、線条体ー淡蒼球外節ニューロンを刺激したときには主に「遅い興奮」という応答が認められた。 一方、大脳皮質-線条体投射ニューロンの解析のため、逆行性レンチウイルスベクターをマウスに注入して大脳皮質-線条体投射ニューロンにChR2を発現させた。大脳皮質運動野にオプトロードを刺入し、光刺激に応じた興奮を確認した後、大脳皮質運動野にオプトロード、淡蒼球外節、黒質網様部に記録電極を刺入し、大脳皮質ー線条体投射ニューロンの興奮誘導に対する応答を記録した。その結果、淡蒼球外節、黒質網様部で主に「抑制ー興奮」という応答が認められた。 これらの結果から、3種類のニューロンが淡蒼球外節や黒質網様部の神経活動を制御する機構が明らかになりつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PDE10A2-tTA/tetO-ChR2マウスを用いた線条体投射ニューロン、およびD2R-tTA/tetO-ChR2マウスを用いた線条体-淡蒼球外節ニューロンの神経生理学的解析では、最初に線条体に光照射することにより線条体投射ニューロンおよび線条体-淡蒼球外節ニューロンが光刺激に応じて興奮することを確認し、次に、大脳基底核を構成する神経核から興奮に対する応答を記録した。 逆行性レンチウイルスベクターを用いた大脳皮質-線条体投射ニューロンの解析では、研究協力者の協力のおかげでChR2の発現量を上げるためのウイルスベクターの改良に成功した。この改良により、大脳皮質ー線条体投射ニューロンの興奮誘導だけでなく、大脳基底核を構成する神経核から興奮に対する応答を記録することができた。 これらの状況はほぼ実験実施計画の通りであり、順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
PDE10A2-tTA/tetO-ChR2マウス、D2R-tTA/tetO-ChR2マウスおよび逆行性レンチウイルスベクターを利用した線条体-淡蒼球外節投射ニューロン、大脳皮質-線条体投射ニューロンの3種類の経路の電気生理学的な解析を引き続き行う。さらに、これらのマウスの線条体あるいは大脳皮質を自由行動下で光刺激し、興奮誘導に対する自発運動の変化を観察する。 一方で、研究協力者と作製している、線条体-黒質投射ニューロンにChR2を発現するAchrm4-tTA/tetO-ChR2マウスの系統選別を行い、線条体にオプトロードを刺入し、光刺激に応じた線条体-黒質投射ニューロンの興奮誘導を確認する。そして、線条体-黒質投射ニューロンを興奮誘導したときの応答を大脳基底核を構成する神経核から記録する。 研究費は主に、電極、光ファイバー、実験動物などの物品の購入や、学会発表のための旅費に使用する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、実験補助のため人件費・謝金に予算を割り当てていた。しかし、実際には予想よりも効率よく神経活動の記録を行うことができたため、実験補助を依頼しなくても、実験計画に沿って順調に実験を遂行することが出来た。そのため、次年度使用額が生じた。 電極や光ファイバー、実験動物の飼育費など主に物品費として使用する予定である。また、研究成果の発表や情報収集を行うため学会等にも積極的に参加することを計画しており、旅費にも使用する。
|