研究課題/領域番号 |
25351003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
豊田 浩士 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳機能計測研究室, 主任研究員 (10558084)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MRI / 脳血流量 |
研究概要 |
本研究の目的は,MRI を用いて脳血流量(CBF)の非侵襲的リアルタイム計測を実現し,その新規CBF計測法を,脳機能イメージング法として確立させることである. 初年度となるH25年度の実施計画は,1)CBF 定量のための動脈スピン標識(ASL)法を新規開発することと,2)それを使用し,計測速度と標識効率の向上を図るような技術上の工夫を行うこと,に主眼を置いて研究を行った. 新規ASL法のベースとなる撮像パルス系列には,単スラブ単励起の3次元(3D)収集法を開発し実際の撮像を行ったが,高感度の撮像は可能であったものの,高速撮像の条件を満たそうとすると,アーチファクトが生じやすいことが判明した.特に,第2位相エンコード方向の画像のボケが目立った.その対策として,3D収集のスラブを分割して,多スラブを多励起で撮像する方法も開発し,全脳の脳血流量を安定して定量する撮像法として確立することができた.安静時の脳血流量を従来法と比較したが,得られた脳内の灰白質,白質における局所脳血流量の定量値が,従来法による定量値と比較して妥当な値であることを確認した.その検討内容は,H25年度4月にMRIの国際学会であるISMRMにて発表を行った.多スラブに分割した場合にも,CBFの定量性に関しては従来法と同等の精度を示し,方法論的妥当性は検証できたが,反面,多スラブ・多励起の場合には,撮像時間の短縮化は困難で,脳機能的MRIに用いるためのリアルタイムCBF計測には不十分であることも分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H25年度から研究環境が変わり,利用できるMRI装置システムが新しくなったため,これまでに開発してきたパルス系列の全てを新システム向けに書き換える作業が必要となった.そのために予想以上に多くの時間を要したことが,予定した計画通りには進まなかった主な要因である. H25年度の計画の項目1「新規ASL法パルス系列の開発および撮像パラメータの最適化」に関しては,項目1-a)の動脈スピン標識(ASL)のための準備パルス系列の開発部分は予定通りに進んでおり,各種ASL法のためのパルス系列の新規開発は,それぞれのパルス系列における撮像パラメータの最適化の部分を除き,完了することができた.それらの定量法としての方法論的妥当性を検証する作業を行っている.また,項目1-b)の実用的なリアルタイムCBF 計測のための基盤となるパルス系列の高速化についての検討段階に入っている. 項目1の研究内容が未だ完了していないため,その完了後に実施を予定していた健常人ボランティアを対象とした研究実施計画の項目2「新規ASL法の,脳機能計測法としての妥当性の検証」に関しては、ほとんど進行しておらず,準備段階に留まっている状況である.この計画項目2もH26 年度前半には開始予定である.
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今後の研究の推進方策 |
計画項目1の「新規ASL法パルス系列の開発および撮像パラメータの最適化」に関しては,ヒトを対象とした実験を用いて諸条件の最適化を行っていく方法をとってきたが,より効率を上げるために,今後は動物用MRI装置も併用して開発を進めて行く方針を立てており,現在その準備を進めている最中である. 実用的なリアルタイムCBF計測のためには,脳全体を短時間に安定して撮像する技術が要求され,そのためには,より高速な撮像のベースとなるパルス系列の開発が必要となる.具体的には,RFパルスを工夫して同時に多スライスあるいは多スラブを収集可能とする撮像パルス系列を開発中である.その技術を用いたASL法のパルス系列をヒト用・動物用の双方のMRIシステムで開発・導入することを計画している.その際にはRFパルスを独自に設計することも要求され,今後はその面の開発にも力点を置いて研究を進めて行く.さらには,画像再構成の手法も工夫しなければならず,そのためのアルゴリズムの開発も検討していく予定である. 開発が完了した新規ASL法は,ヒト用MRI装置を用いて検証実験を開始し,その脳機能計測法としての妥当性を検証していく必要がある.そのための実験も順次実施していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
健常人を被験者とした研究が予定通りに進行せず,予定していた謝金の支払いが発生しなかったため. 国際学会成果発表のための海外出張旅費支出を予定していたが,別の予定が続いて入ったため公費にて支払うことができなかったため. 平成26年度は,健常人被験者を用いた機能的MRIの実験を予定しており,被験者に対して謝金を支払う予定である. また情報収集や成果発表のために国内外出張を行う際の旅費として使用する予定である.
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