研究課題/領域番号 |
25360001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤野 彰 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (60646404)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 客家 / 台湾 / 中国 / 多元化 / 中国革命 / 中国共産党 / 民主化 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
第2年度の平成26年度は(1)関連資料の収集・分析(2)中国大陸の客家居住地域における現地調査および客家研究者との意見交換――に重点を置きつつ、研究の深化に努めた。関係資料は、前年度に引き続き、国立国会図書館、東洋文庫、アジア経済研究所など関連の図書館で広範囲にわたって収集を行い、研究の基盤となる資料調査をおおむね固めることができた。中国への現地調査(平成26年9月実施)では、大陸客家の本拠地である福建省を訪問し、省西北部の長汀県および寧化県で客家博物館や石壁客家祖地の状況を調査して、大陸における族群(エスニック・マイノリティー)としての客家の政治・社会・文化的位置づけを考察した。同時に長汀県に隣接する旧革命根拠地・江西省瑞金も訪れ、中央革命根拠地歴史博物館の展示内容調査を行った。さらに福建省福州において中国を代表する客家研究家である謝重光博士と意見交換を行い、客家問題への研究上の切り口について多くの重要な知見を得た。以上の資料調査および現地調査を通じて、1980年代末以降、台湾の民主化の中で発生した客家ルネッサンスと、中国の改革・開放政策の中で発生した客家復興は東アジアの歴史的転換期という大きな時代背景を共有しつつも、客家の政治・歴史的位置づけにおいて大きな相違があることを確認できた。とりわけ、台湾客家が政治的権利を獲得し、独自のアイデンティティーを確立する環境を整えつつあるのに対し、中国では共産党政権の一元的な政治制度、歴史観、民族観の制約により、客家復興が主として客家研究、客家文化振興、統一戦線戦略の枠内にとどまっていることがわかった。たとえば、客家は中国革命の主力として活躍したが、革命博物館では客家が語られず、客家博物館では革命が語られないというタブーが存在する。中国の多元化という観点から、この「客家タブー」の政治・歴史的根源を解明するのが平成27年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究達成目標であった(1)より広範囲の資料の収集・調査(2)中国の客家居住地域である福建省、江西省への現地調査――の2課題についておおむね任務を達成した。これにより、海峡両岸のそれぞれの多元化潮流の中における客家問題の位置付けの相違や特徴がいっそう明確に把握できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、中国客家のもう一つの重要拠点である広東省梅州への現地調査を実施する予定である。梅州の中国客家博物館を調査するとともに、現地の客家研究者との研究交流を行いたい。これまでの2年間にわたる研究を踏まえて、すでに原稿の執筆に着手しているが、27年度は執筆を加速し、3か年の研究期間終了後に単行本の形で成果を公開発表できるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年9月の中国現地調査において、予定していた人件費(客家語通訳)を使用する局面が生じなかったことと、平成27年3月に行うつもりだった追加の中国現地調査を、勤務先大学の業務の都合により中止したことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の中国広東省での現地調査に際して、必要な旅費、資料収集費などに計上する予定である。時間的余裕があれば、福建省への現地調査も追加で行いたい。
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