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2013 年度 実施状況報告書

軍事と外交から見るソ連の帝国建設:カリム・ハキーモフ(1892-1937)の研究

研究課題

研究課題/領域番号 25360002
研究種目

基盤研究(C)

研究機関北海道大学

研究代表者

長縄 宣博  北海道大学, スラブ研究センター, 准教授 (30451389)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード帝国 / ソ連 / 帝国主義 / ロシア / アジア / 中東 / 国際情報交換
研究概要

本研究は、他分野間の対話を促す触媒としての役割を目的の一つとして掲げている。25年度は、国内外の研究者との意見交換を通じて、本研究をより広い文脈に位置づける条件を整えた。8月に大阪で開催されたスラヴ・ユーラシア研究東アジア大会では、Between Anti-Imperialism and Imperial Legacy: The Bolsheviks’Involvement in the Middle Eastというパネルを組織した。そこで研究代表者は、紅海東岸での英ソの競合、それを利用するサウジアラビアとイエメンという文脈にハキーモフの活動を位置付ける報告を行なった。これを契機に、サンクトペテルブルグ・ヨーロッパ大学のSamuel J. Hirst氏(ソ連・トルコ関係)、マンチェスター大学のDenis Volkov氏(ロシア・イラン関係)、広島市立大学のヤロスラフ・シュラトフ氏(日ソ関係)と共同研究を進めることになった。我々は26年11月の北米のスラヴ・ユーラシア学会(ASEEES)に両大戦間期に関する二つのパネルを提案し、すでに承認されている。これは共同研究の最初の成果となる。また、昨年11月に史学会の公開シンポジウム「帝国とその周辺」で「協力者か攪乱者か?ロシア帝国のタタール人」という報告を行ない、ハキーモフの足跡を「帝国の遺産」の中に位置づけた。
25年度は資料調査の面でも前進があった。とりわけ、バシュコルトスタン共和国中央歴史文書館に所蔵されている、ハキーモフの生涯全般にわたる文書群(f. R-4771)は予想以上に豊かだった。また、ハキーモフの生まれた村にある博物館でも調査を行ない、貴重な写真を複写することができた。本研究は新史料を博捜することを重要な目的に掲げているので、今後は本研究で収集した資料を提供することで、地元に研究成果を還元することも考えている。それと関連して、27年度にウファで予定されているハキーモフ生誕125周年の国際会議で報告することも打診されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究を通じて、新しい研究者のネットワークが早くもできており、それは本研究の国際的な成果の発信を約束するものである。これは重要な達成点として特記できる。また、資料調査の面でも、ウファでの個人文書の調査のおかげで、ハキーモフの基本的な足跡は整理できたと考えている。確かに当初予定していたモスクワの国立社会政治史文書館での調査はできなかった。しかし、ウファの文書は、1960年代にハキーモフの伝記を書いた人物がモスクワやタシュケントの文書館で筆写したノートから成っているので、資料を効率的に閲覧できるとは言えない両都市の文書館で、今後どの資料から調査すべきかの方向性を掴むことができたことの意義は極めて大きい。
前述の東アジア大会で報告した原稿は、論文として投稿できる程度まで練り上がりつつある。内戦期については、ソ連時代に公刊された多数の史料集や回想録を収集・読解し、ハキーモフの活動の文脈を再構築している最中であり、論文になるにはまだ時間を要する。

今後の研究の推進方策

26年度は、7月上旬にロンドンである国際会議での報告と組み合わせて、27年度に予定していたIndia Office Recordsでの調査を行なう。とりわけ、ハキーモフの経歴の中でイランのマシュハドとラシュトでの総領事時代は謎が多く、いまだモスクワの文書の公開にも制限があるので、ロンドンでの調査は従来の空白を埋める絶好の機会である。26年度には、ワルシャワとモスクワでも国際研究集会に参加し、モスクワでは中央アジアの内戦期のハキーモフに関する資料調査も組み合わせる。
27年度はモスクワの外交史料館と軍事文書館の調査を並行して行う。とりわけ前者での調査では、前年度のロンドンでの調査が生きるはずだ。また、8月に幕張で開催される国際中東欧研究学会(ICCEES)第9 回世界大会では、本研究に関わるパネルを二つ出すことになっている。28年度は、それまでに集めた史料の分析を深化させ、論点を整理した上で、情報の取りこぼしがないか、再度モスクワの文書館を中心に調査する。最終年度であるので、総括として国内外の学会で積極的に成果を発信したい。

次年度の研究費の使用計画

未使用額360,635円のうち、1,880円は3月の研究資料の郵送費の支払いが4月になるため発生したものであり、残る金額は、当初予定していたモスクワでの調査ができなかったため生じたものである。
1,880円は、研究資料の郵送費の4月支払いに充てる。残る金額は、26年6月のロンドンでの資料調査に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [学会発表] The Red Sea Becoming Red? The Bolsheviks’ Commercial Enterprise in the Hijaz and Yemen, 1924-1938

    • 著者名/発表者名
      長縄宣博
    • 学会等名
      The 5th East Asian Conference for Slavic Eurasian Studies
    • 発表場所
      大阪経済法科大学(大阪府八尾市)
  • [学会発表] 協力者か攪乱者か?ロシア帝国のタタール人

    • 著者名/発表者名
      長縄宣博
    • 学会等名
      史学会
    • 発表場所
      東京大学(東京都文京区本郷)
    • 招待講演
  • [学会発表] Invitation to Guests of God: Bolsheviks’ Transnational Hajj Enterprise

    • 著者名/発表者名
      長縄宣博
    • 学会等名
      46th Annual Convention of the Association for Slavic, East European, and Eurasian Studies
    • 発表場所
      San Antonio Marriott Rivercenter,TX (USA)
  • [学会発表] A Civil Society in a Confessional State? Muslim Philanthropy in the Volga-Urals Region during World War I

    • 著者名/発表者名
      長縄宣博
    • 学会等名
      83rd Anglo-American Conference of Historians
    • 発表場所
      Senate House, University of London, London (UK)
  • [図書] Regional Routes, Regional Roots? Cross-Border Patterns of Human Mobility in Eurasia2014

    • 著者名/発表者名
      山根聡・長縄宣博編
    • 総ページ数
      111
    • 出版者
      スラブ・ユーラシア研究センター
  • [図書] 橋本伸也編『ロシア帝国の民族知識人:大学・学知・ネットワーク』2014

    • 著者名/発表者名
      長縄宣博、タチャーナ・ジェコフスカヤ、梶さやか、タリャ=リーサ・ルーカネン、小森宏美、橋本伸也、磯貝真澄、伊藤順二、巽由樹子、福嶋千穂、今村労、オクサーナ・ヴァフロメーエヴァ、エレーナ・アスタフィエヴァ
    • 総ページ数
      365 (275-296)
    • 出版者
      昭和堂

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公開日: 2015-05-28  

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