研究課題/領域番号 |
25360002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長縄 宣博 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (30451389)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 帝国 / 帝国主義 / ソ連 / 中央アジア / 中東 / 外交史 / 軍事史 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
平成27年度も国際的な業績作りと史料収集の両面で大きな成果があった。特に、本研究も共催の一角を担って、スラブ・ユーラシア研究センターの夏期シンポジウム「ロシアとグローバルヒストリー」を組織できたことの意義は大きい。この研究集会には、8月に幕張で開催された国際中東欧研究協議会(ICCEES)第9 回世界大会に合わせて来日したベテランと新進気鋭の歴史家を招待できた。現在、その成果として、国外の出版社から英文論集を出す計画が進んでいる。幕張での国際会議ではパネル「戦間期アジアにおけるボリシェヴィキ:反帝国主義の帝国建設?」を組織し、極東とトルコの事例を含めることができた。 史料調査の最大の成果は、3月にモスクワの三つの文書館(外交史料館AVPRF、経済文書館RGAE、社会政治史文書館RGASPI)で行なった調査から得られた。そこでは二つの目的があった。第一に、イラン北東部のマシュハドで総領事だったハキーモフの足跡(1921-1923年)について、平成26年度に大英図書館のIndia Office Recordsで得た情報とソヴィエト政府側の記録を対照させること。第二に、ハキーモフのブハラ勤務時代(1920年9月から21年6月)に関する情報を増やすことである。ハキーモフのイラン時代は依然謎が多いとはいえ、当時外務人民委員(外相)だったチチェーリンの官房の文書(AVPRF, f. 04)、そして対外通商人民委員部の対イラン貿易の文書(RGAE, f. 413)は、イギリス側の情報を補強し、さらにソヴィエト側の意図を読み取れたという意味で極めて有意義だった。ハキーモフのブハラ時代については、RGASPIに所蔵の党中央委員会の中央アジア局(f. 61)とコミンテルンのトルキスタン局(f. 544, op. 4)の文書がとりわけ有益だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの資料調査で、まだ精粗はあるものの、オレンブルグ、タシュケント、ブハラ、マシュハド、ジッダ、サヌアというハキーモフのキャリア形成の軌跡は見通せるようになった。平成26年度までにハキーモフの紅海東岸における活動について2本、平成27年度にオレンブルグ、タシュケント、ブハラの軌跡について1本、分量のあるコンフェレンス・ペーパーにまとめることができ、今後の課題も明確になった。また、平成27年度の業績にある『越境者たちのユーラシア(シリーズ・ユーラシア地域大国論5)』でも、ハキーモフの伝記研究の重要性をより広い文脈に位置付ける論考を収めることができた。平成27年度の最後に、謎の多いハキーモフのイラン時代について集中的に史料収集できたことは、今後の研究の進展に決定的な意味を持つ。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成28年度は、ハキーモフの軌跡の文脈を復元するための二次文献の読み込みを進め、それまでに集めた史料を適切に位置付け、彼の活動した複数の地域と戦間期に関する研究にどのような新しい視角を持ち込めるのか考察を深める。とりわけ、前年度の資料調査を踏まえて、ハキーモフのイラン時代について論文を執筆する。これまでの調査から、モスクワの軍事文書館(RGVA)と社会政治史文書館(RGASPI)で最終的な史料調査が必要なことが判明しているので、これを実施する。これらを踏まえたうえで、国内外の学会で積極的に成果を発信したい。
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