本研究は、タタール人革命家でソヴィエト外交官のカリム・ハキーモフ(1892-1937)の伝記的研究を通じて、中央アジアの内戦で「反帝国主義」のスローガンを掲げ現地民の支持を得ようとしたボリシェヴィキの奮闘こそが、初期ソヴィエト外交(とくに対イラン、サウジアラビア、イエメン)を形作ったことを解明した。しかも、「反帝国主義の帝国」ソ連を支えた制度や実践が、実は帝政期からの遺産に多くを負っていたことも明らかになった。本研究は、モスクワ、ウファ、ロンドンの文書館を中心に未公刊史料を博捜することで新しい研究領域を開拓し、関連する国外の研究者とも協力しながら、積極的に成果を海外に発信した。
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